子宮頸がんを引き起こすとされるヒトパピローマウイルス(HPV)の新しいワクチンについて海外で関心が高まっている。英国や米国では使用が推奨されているが、日本では存在すら知られていない。医師の濱木珠恵氏は「私のクリニックでは予防接種を行っているが、希望者の多くは中国人で、日本人は半数以下。日本人の医療知識は世界で周回遅れになっている」と指摘する――。
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子宮頸がんの9割をカバーするワクチン

ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防する「ガーダシル」というワクチンがある。HPVは子宮頸がんをひき起こすとされるウイルスだ。海外では、9つの型のHPV感染を抑える9価(※)のガーダシル(ガーダシル9)が世界標準となっているが、日本にはいまだ4価のガーダシルしか導入されていない。

※編集部注:病原体に複数の型がある場合、それぞれに応じた抗原を含むようにワクチンが作られる。9価であれば9種類、4価であれば4種類の抗原を含む

4価のワクチンはHPV‐6,‐11,‐16,‐18の感染を抑えることで子宮頸がん全体の7割をカバーしていた。それに加えてHPV‐31,‐33,‐45,‐52,‐58も抑える9価だと、子宮頸がんの原因となる抗原の9割をカバーする。子宮頸がんの発生率を大幅に減らせると期待できる。

日本だけが世界標準の情報から切り離されている

ナビタスクリニック新宿では、2017年12月から9価のガーダシルを海外から個人輸入し、希望者への予防接種を行っている。

では、どんな人が接種を希望するのだろう。意外かもしれないが中国人だ。2018年10月までの接種者440人のうち289人は中国籍であった。大半は日本に住む20代の留学生だが、予防接種目的で来日する人もいた。一方、日本人は151人と半数以下、しかも男性や30代女性も含む人数であり、肝心の20代女性はさらに少なかった。

この関心の差はなんだろう。日本では、ガーダシル9についての情報がきちんと伝わっていない。日本だけが世界標準の情報から切り離されているため、日本人と中国人との関心度に違いが出てしまったのではないだろうか。