仮想通貨のブームで知られるところとなったブロックチェーン技術。金融の分野と思われがちだが、さまざまな分野にも応用できる可能性を持つ。土地や不動産取引にはどのような影響が予測されるのだろうか──。

「ブロックチェーン」の定義が定まっていない

仮想通貨ビットコインの投機ブームは落ち着いたが、ビットコインを支えたブロックチェーン技術は革新的で、金融だけでなく不動産などほかの分野にも活用されて定着していくのではないか――。仮想通貨ブームが去った後、こうした議論がよく交わされるようになりました。

国立情報学研究所 准教授 岡田仁志氏

結論を急ぐ前に、まずブロックチェーンについて整理しておきましょう。なぜならブロックチェーンという言葉の定義が現状では定まっておらず、本来ブロックチェーンに当てはまらないものまでそう呼ばれて、混乱をきたしているからです。

ブロックチェーンは、もともとはビットコインの駆動部分として開発された技術です。ビットコインなどの仮想通貨を「通貨」として機能させるためには取引が二重に行われたり、取引内容を書き換えるなどの改ざんが起こらないようにする必要がありました。

そこでビットコインでは、世界の約1万台超のコンピュータ(ノード)それぞれで、すべての通貨の取引データを保存する仕組みになっています。取引データはおよそ10分ごとにブロックとして記録され、1ブロックに約2000件の取引が格納されています。そのブロックは一定のルールに基づき作成順に接続されており、取引データが改ざんされると接続のルールが守られていない状態が検知されるため、改ざんできないシステムになっているのです。

DLTとはプレーヤーの顔ぶれが異なる

よく似た技術として、「分散型台帳技術=DLT(Distributed Ledger Technology)」があります。DLTも複数のノードが分散してブロックを記録しますが、製品によっては中心となる親ノードが置かれます。ノードの数も製品によって数個から20個程度と限定的です。

一部の銀行がコインの導入や導入の検討をしていると報じられています。それがブロックチェーンによるものかDLTによるものかは不明ですが、メディアではブロックチェーンとDLTをひとまとめにして“ブロックチェーン”と呼ぶことがあります。ブロックチェーンとDLTは未定義語ですから、正確な使い分けはできません。けれども、似たようなものだと考えるのはよくありません。なぜならプレーヤーの顔ぶれが大きく異なるからです。