日本の小さなパンツ屋がつくった「包帯パンツ」。一本の電話をきっかけに、マドンナ「ワールドツアー」のステージ衣装に採用されることになる。生みの親・野木志郎氏は「失敗がネタになる。そう思えば、いつでもチャレンジできる」という。その不屈のチャレンジ精神とは――。

※本稿は、野木志郎『日本の小さなパンツ屋が世界の一流に愛される理由(ワケ)』(あさ出版)の一部を再編集したものです。

甲冑パンツ、ニューヨークへ行く

前回の記事でご紹介したように、甲冑パンツはいちかばちかで世に出した商品です。

その甲冑パンツが、時を経て別の展開を生み出しました。なんと、2015年9月9日にはじまったマドンナのワールドツアーで、彼女のバックダンサーたちが甲冑パンツを穿いてくれたのです。

ことのはじまりは、その1年ほど前。うちの女性社員が受けた電話でした。「野木さん、なんか……マドンナって言ってますけど」「マドンナ? あのマドンナ? 嘘やろ?」

電話を替わってもらうと、ニューヨークからかけているという日本人の女性が、「マドンナの衣装をデザインしているチーフデザイナーのアシスタント」だと名乗りました。

アシスタント女性「マドンナってご存知ですか?」

野木「歌い手のマドンナさんやったら知ってますけど」

アシスタント女性「そうです。そのマドンナです」

なんだかコントみたいな会話ですが、そんな感じでした。

聞けば、ワールドツアーの衣装を検討している段階で、侍アンダーウェアが候補に挙がっている、ついてはサンプルを購入したいとのこと。私は、そういうことならお代はええからと、甲冑パンツをニューヨークに送りました。

マドンナのライブに映った1枚のパンツ

1カ月経ち、2カ月経ち、待てど暮らせど連絡がないので諦めかけてきたところ、彼女から電話。「バッチリです」。

5種類の武将で11人分、全部で55枚ほしいとのこと。クレジットカードを切ってくださいという申し出がありましたが、私はいちかばちかでこう言いました。

「パンツは無償提供でいいです、その代わりマドンナさんのライブでパンツが写って いる写真1枚だけでもいいので使用許可をください」

すると、後日マネジメントからOKが出ました。ただ、正直言って、その時点の私はまだ疑っていました。そんな簡単に許可なんか出るはずがない。もしこの話が嘘で、タダで送った甲冑パンツ(1枚8800円)がニューヨークの路上で1枚5000円くらいで叩き売りされていたら……、とも思ったのですが、それはそれで笑い話として最高やん、ネタに使える――それくらいに考えていたのです。

待ちに待った9月9日、ユーチューブにかじりつきでライブ動画がアップされないかチェック。しかし見つかりません。次の日、そのまた次の日、そのまたまた次の日と、毎日仕事中、帰宅後、ユーチューブをチェックしました。そして、諦めかけていた1週間が経った頃、見つけたんです! 甲冑パンツが映っている動画を! もう叫びました!

「やった!! 本物やった!!」