2月1日から、東京・神奈川の中学受験が始まる。子供たちは、3人に1人しか第一志望校に合格できない厳しい世界に挑む。中学受験塾代表の矢野耕平氏は「仮に合格できなくても親は泰然自若とし笑顔を保つことが大事。親のメンタルの強さが子の合格を引き寄せる」という。合格を引き寄せる親は、どこが違うのか――。

中学受験では第一志望校に合格できるのは3人に1人

2月1日より、都内・神奈川の国・私立中学入試が始まる。

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近年は中学受験市場が再び活況を呈している。都心部の小学生数が増加傾向にあること、また、2020年度より本格的に実施される大学入試改革への不安などがその要因である。だからこそ、人気校を中心に中学受験では大激戦が繰り広げられる。

第一志望校に合格できる子は「3人に1人」程度と言われている。裏返せば、第一志望校に届かず涙に暮れる子が「3人に2人」程度いることを意味する。そのような中学入試で2つのタイプの「まさか」がある。

1つは、模擬試験などで良い結果を残し、第1志望校合格を確実視されていた子が「まさか」の不合格になってしまうケース。そして、もう1つは、第1志望校合格はなかなか難しいとされていた子が「まさか」の合格を勝ち取るケースである。

両者にそれぞれの共通点はあるのだろうか。具体的な事例を紹介しつつ、中学入試本番に臨む親子のあるべきスタンスを提唱したい。

厳しい結果に直面し「感情的」になった親の末路

いまから十数年前の話。当時、わたしはある大手進学塾で志望校別対策の責任者として教えていた。わたしが対策・指導に携わった学校は女子御三家の一角「女子学院(JG)」である。この学校は2月2日の昼に合否発表掲示をおこなうのだが、わたしにとって忘れられない思い出がある。

その日、わたしは女子学院に惜しくも手が届かなかった子に一声かけようと学校前で待機していた。

すると合否発表の会場から泣きながら出てくる1人の女の子を見つけた。その隣にはうつむく母親がいる。間違いない。わたしが日曜日の志望校別対策授業で指導をしていた子である。

声をかけようと近寄ったそのときのこと。母親はわたしをすごい形相でにらみ付けたかと思うと、こう言い放った。

「受からなかったんだからもういいでしょ! こっちに来ないで!」

その子はこちらをちらりと見たが、そのまま母親に引きずられるようにして行ってしまった。第1志望校に合格できなかったわけで、母親がこちらに憎悪の目を向けるのは理解できる。担当講師であるわたしが責められるのは当然だろう。しかしながら、母親が子の眼前で感情を爆発させた結果、その子にどのような心的影響を及ぼすのか、わたしはそれが心配になった。

実際、翌日以降のこの子の受験結果は良くないものになってしまった。