「ひどい『モラハラ』を繰り返す夫に限って、妻を大切にしていると思い込んでいる」。夫婦問題研究家の岡野あつこ氏はこう指摘する。たとえば「息子の成績が悪いのは、お前の遺伝子が足を引っ張っているからだ」などと妻を罵っていた夫は、子供が中学に入ると、家から追い出されたという。深刻なモラハラの現状と、「モラハラ夫」の共通点とは――。

モラハラによる離婚は珍しくない

※写真はイメージです(写真=iStock.com/OSTILL)

ハラスメントをひと言で言えば、「嫌がらせ」や「いじめ」のこと。セクハラやパワハラをはじめ、飲酒にまつわるアルハラ(アルコール・ハラスメント)や、妊婦や出産後の女性に対するマタハラ(マタニティ・ハラスメント)など、私たちの日常生活には30種類以上のハラスメントが潜んでいると言われている。

家庭内においても例外ではない。たとえば、モラハラ(モラル・ハラスメント)は、ここ数年で急激に浸透してきたハラスメントのひとつだろう。おもに夫婦間で生じるモラハラは、言葉や態度により、パートナーに精神的にダメージを与える嫌がらせ全般を指す。無視される、努力を認めてもらえない、理由もなく怒られる、といったプレッシャーを継続的にかけられるため、モラハラを受けた相手は心に大きな傷を負う。やがて、パートナーからの精神的な暴力や虐待に耐え切れなくなると、トラブルや離婚に発展するケースも珍しくない。

「自分には関係ない」と思っている

多くのハラスメントと同様、モラハラがもたらすダメージも目に見えるものではない。だからこそ、本人がモラハラで苦しんでいることにまわりが気づかない場合もあり、被害者がひとりで抱え込んでしまっているケースも少なくない。実際、「モラハラ夫」に悩み、真剣に離婚を考えている女性からの相談も年々増えている。

問題は、そうした「モラハラ夫」は、自分がしている妻へのモラハラに気づいていないという点だ。妻が夫との離婚を考えるレベルにまで達している場合の多くは、毎日の自分の言動が妻を傷つけているとは想像すらしていない、無自覚な「モラハラ夫」であることがほとんど。一般的なニュースや他人のよもやま話に「モラハラ」という単語が登場しても、「自分には関係ない話だ」と涼しい顔で聞き流している。なかには、「自分は妻を大切にしている」と思い込んでいるツワモノもいるほどだ。