改正出入国管理法が成立し、来年4月から外国人労働者の受け入れが拡大する。だが制度の全体像はまだ明らかになっていない。本当に大丈夫なのか。先行する韓国では、日本の「技能実習制度」を模倣した制度が行き詰まり、「雇用許可制」に切り替えている。韓国の労働事情に詳しい福島大学・佐野孝治教授は「日本も技能実習制度を廃止すべきだ」と提言する――。

改正出入国管理法が12月8日に参院本会議で可決し、成立した。来年4月から、「特定技能1号」と「特定技能2号」の在留資格を新設するとともに、出入国在留管理庁を設ける内容である。筆者は、技能実習生や留学生に単純労働を依存している現状に比べれば、新たな在留資格を設け、労働者として受け入れるという方向性に、基本的に賛成である。

しかし、審議時間が少なく、受け入れ人数や基準など制度の全体像が明らかになっていない。また、受け入れ態勢、社会保障、技能実習生の実態など解決すべき課題も、省令に委ねられ、先送りされている。そこで本稿では、韓国の「雇用許可制」を研究してきた立場から、出入国管理法の2年後の見直しに向けて、持続可能な外国人労働者受け入れ制度を構築するため、いくつかの提言を行いたい。

提言が目指すのは、日本人と職を奪い合うことがなく、外国人労働者の労働者としての権利が保護され、日本人と共生するための支援制度が整い、多文化共生を基本に置いた持続可能な外国人労働者受け入れ制度である。

政府が雇用許可書を発給する韓国の「雇用許可制」とは

まず簡単に韓国の「雇用許可制」について説明しておこう。韓国では、当初は外国人労働者を受け入れる際に、日本をモデルとして、「研修就業制度」(研修生・実習生制度)を採用していたが、2004年に雇用許可制へ転換した。そして、2007年には、研修就業制度を廃止した。さらに在韓外国人処遇基本法(2007年)や多文化家族支援法(2008年)などを相次いで制定し、統合政策を進めている(※1)。その後、外国人労働者は増加し、2017年末には83.4万人に達し、就業者数の3.1%を占めている(日本は、128万人で、2%)(図表1)。

韓国の雇用許可制とは、「国内で労働者を雇用できない韓国企業が政府(雇用労働部)から雇用許可書を受給し、合法的に外国人労働者を雇用できる制度」である。2018年9月末現在、一般雇用許可制(非専門就業ビザ)は27万8690人と特例雇用許可制(訪問就業ビザ)(※2)は24万3905人である。

日本の参考になる一般雇用許可制は、ベトナム、フィリピンなど16カ国政府との間で二国間協定を締結し、毎年、外国人労働者の受け入れ人数枠(クォータ)を決めて実施する制度であり、中小製造業、農畜産業、漁業、建設業、サービス業の5業種が対象である。