幼児の能力を最大限に引き出すには、なにが重要なのか。3児の父である松岡修造さんは「根性論では何も達成できない。小さな子であっても、きちんと道筋をつけることが『できる』につながる」という。小学校受験のカリスマ・石井美恵子さんとの対談をお届けしよう――。
『プレジデントFamily2019年冬号』より(撮影=堀 隆弘 /ヘアメイク(石井さん)=櫻井由美子)

「自分の子供のことになると冷静ではいられないんです」

【松岡】今回、石井さんのご著書(『募集しない名門塾の一流の教育法』)を読ませていただき、子供が成長するうえで、親の関わり方がいかに大切かがよくわかりました。

【石井】ありがとうございます。

【松岡】この本を読んで思い知らされたのが「僕は超ダメおやじだ」ということです。「話し合いができていないな」とか、「妻に任せきりのことが多いなぁ」とか。もう読んでいて恥ずかしくなりました。父親としての向き合い方がもっとちゃんとできていたら、子供たちにとって良かったんだろうなって。

【石井】ご立派に成長されているじゃないですか。娘さんも難関の宝塚音楽学校に合格されたし。

【松岡】いや、それは僕の育て方が正しかったというわけではないと思います。お伺いしたいのは、子供と向き合ううえで大切なことは何でしょうか?

【石井】いちばんは「待つ」ということですね。やるべきことができないとき、子供たちができるまで、終わるまで焦らず待ちます。「何分でやりなさい」と時間を制限したりせず、自発的にやり抜こうという気持ちになるまで、気長に待つんです。

【松岡】なるほど、「待つ」ですね。冷静になって。僕も、テニス指導者としては冷静に取り組めるタイプだと思っています。テレビではいつも感情的に叱っているように見えるかもしれませんが、心の中では「ド」がつくくらい冷静なんですよ。ところが、これが自分の子供となると、冷静ではいられないんです。感情が先に出てしまう。テニスの指導で禁句にしている「早くしろ」「なぜできないのか」といった言葉をつい口走ってしまいます。

【石井】わかります。自分の子供には、つい怒鳴ってしまいますよね。

【松岡】石井先生もそうなのですか。少し安心しました。子供に接するうえで、ほかに大切なことは?

「できないことも100万回やればできるようになる」

【石井】当たり前のことを当たり前にできるようにすること、ですね。挨拶をする、ちゃんと人の顔を見て話をするといった、ごく当たり前ができていないことが多いので。

【松岡】僕は高校生になってもお箸を正しく持つことができていなかったんです。慶應高校からテニスの名門、柳川高校に転校したのですが、生活指導に厳しく、「そんな持ち方があるか!」と徹底的に直されました。あのとき直してもらえていなかったら、「くいしん坊!万才」への出演オファーもなかったでしょうね(笑)。

【石井】基本的なことは、繰り返し練習して身につけさせることが大切ですね。私がよく言うのは「できないことも100万回やればできるようになる」。

【松岡】100万回!

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