孫子の教えで重要なのは「戦わずして勝つ」ことではない。「戦わずして負けない」ことだ――。上司と部下の問題に応用し、乱世に生き残る術を検証する。

自分の上役や取引先に難しいことを切り出せない「ウジウジ上司」も、部下にとっては困った存在である。

孫子には、次のような戒めがある。

戦勝攻取してその功を修めざるは凶なり。
命づけて費留と曰う

敵を攻め破って城を奪取しても、戦争の目的を達成できなければ、結果は失敗である。これは「費留」、すなわち骨折り損のくたびれ儲けである――。

守屋氏は、「最終的に自分がどうしたいかとイメージを描いておかなければならない、ということです」と解説する。

三井物産に23年間勤務したのち、ヘッドハンティングされてホリプロに転じた経験を有し、その名も『「バカ上司」その傾向と対策』という著書がある経営コンサルタントの古川裕倫氏は、「このタイプの上司は自分に自信がない場合が多いんです」と見立てる。

「さらに、自分の上役や顧客に否定されるのも怖い。そこで、こういう上司がいい意見を述べたときは、『大賛成です』『さすがですね』と思いっきりほめてあげましょう。どうして自分が上司をほめてやらなければならないのかと嫌がらずに。上司であろうと人間なんですから」

ほめて、おだてて、上司魂に火がつくことを期待するが、「費留」とならない程度で見切りをつけることも想定すべし。お追従(ついしょう)は上司を増長させるだけである。

そのうえで、自分はどう振る舞うか。

善く戦う者は、これを勢に求めて、人に責めず

戦(いくさ)上手は、勢いに乗ることを重視し、個々人の働きに過度に期待しない――。

これは、軍を率いる将帥の心得を説いた教えだが、逆説的に部下の立場に置き換えてみる。上司が頼りにならないなら、仕事がうまく運んでいる限り、マイペースで地道に実績を重ねる。上司をあてにせず、勢いに逆らわない。勢いに逆らうかのように、仕事を中断したり、自分ばかり仕事をしていることに不平を並べたりしても、十中八九、逆効果である。

上司の助力を得ずして成果を上げ、会社から高く評価されたとする。そういうときこそ、要注意である。いい気になって舞い上がってはいけない。