【緩和ケア】苦痛の緩和のためだけではない「緩和ケア」

図5.苦痛を早期に取り除くだけで命は延びる
図5.苦痛を早期に取り除くだけで命は延びる

2010年、世界最大のがん学会である米国臨床腫瘍学会(ASCO)で1つの研究が注目を集めた。画期的な手術手技についてでも、大規模臨床試験に関する報告でもない。その内容は、早期からがんの痛みや苦痛に対処する「緩和ケア」に関するものだった。

「同じ標準治療を受けている非小細胞性肺がんIV期の患者を、早期から積極的な緩和ケアを行うグループと希望があれば緩和ケアを行うグループにわけて、比較試験を行った」(腫瘍内科医)。その結果、積極的な緩和ケアを受けたグループでは、痛みや苦痛の軽減による生活の質や精神状態の改善が認められた。「ここまでは当然です。しかし衝撃的だったのは緩和ケアを受けたグループの生存期間が約3カ月、延長したことです」(同・図5参照)。

早期からの緩和ケアが、苦痛を和らげ生活の質を改善することはこれまでにも知られていたが、今回の研究は緩和ケアが生存期間も延ばすことを示した世界初の報告であり、「一概には言えないが、数週間、数カ月の延命に高額な新薬を使わず、適切な緩和ケアで同程度の延命が可能かもしれないと考えると意義深い」(緩和ケア医)でもある。