雑誌「プレジデント」(2018年10月15日号)では特集「ビジネス本総選挙」にて、仕事に役立つ100冊を選出した。このうちベスト10冊を順位ごとに紹介する。今回は第1位の『道をひらく』。解説者はRIZAPグループの松本晃COOと小宮コンサルタンツの小宮一慶CEO――。

――松下幸之助とは何者か

【松本】僕の年代にしたら幸之助さんは神様のような存在です。小学校の頃、将来大人になったらどんな人になりたいかと聞かれるといつも、「松下幸之助」と答えていました。口癖は「ナショナル(現パナソニック)で働きたい」でした。

松下幸之助氏(時事通信フォト=写真)

その頃、幸之助さんは戦後復興で需要が急増した家庭電化製品をつくる大会社の経営者としてすでに有名でしたし、高額所得者の常連でした。僕らにとっては本当に憧れの存在でした。何せ、当時から全国に“街の電器屋さん”が加盟する日本で最初の系列店「ナショナルショップ」のネットワークが張り巡らされ始めていましたから、その経営手腕のすごさは子どもにもなんとなくわかったのです。そのショップの数は、ピーク時には約5万店だったともいわれています。その規模のすごさは、現在のセブン-イレブンの約2万店をはるかにしのぐ数だということからもわかります。ブラウン管テレビ、洗濯機、冷蔵庫……日本人が欲しがる魅力的な家電の数々を世の中に送り出し、人々の暮らしにイノベーションを起こした幸之助さんは、「神様」そのものでした。

【小宮】松下電器産業を創業した松下幸之助さんは、20世紀に日本で最も成功した実業家です。経営において最も大切なのは「企業のビジョン、理念」。その中核をなすのは、企業の存在意義、つまり「目的」です。あのピーター・ドラッカーも「事業の定義はその目的からスタートしなければならない」と言っています。

松下さんは、自社が何のために存在しているかという意義を明確に認識した年(1932年)を「命知元年」として創業記念式典まで行いました。創業から14年も経っていましたが、それだけ自社の存在意義や事業のあるべき姿がわかったことが松下さんにはインパクトが強かったということでしょう。松下さんは企業経営において、「働く姿勢」というものをとても大切にされていました。そうした経営の基本中の基本を体系化して、社員に実践させた日本を代表する大経営者であると思っています。