シリアで誘拐された安田純平氏について、自己責任だ、という批判と、自己責任などではない、という擁護の論争が盛んだ。いまなおアフリカや中東の紛争地で取材を重ねる戦場ジャーナリストの大津司郎氏に意見を聞いた。

日本の大手メディアが危険地帯へ行くことはない

自己責任かどうかを問うてしまえば、答えは現地で捕まったという一点において安田君の「100%自己責任」だ。だが、それは「彼へのバッシングが妥当」ということではない。そもそもこの二分法自体に違和感を覚える。

大津氏(左)「安田君(右)は本当に十分な対策をとったのか」。(右、時事通信フォト=写真)

いま、日本のメディアやマスコミには「国際問題」という視点が欠落している。かつてはドキュメンタリー番組も多数作られていたが、「視聴率がとれない」といった理由で数が減る一方だ。海外では大手メディアが取材に赴くこともあるが、日本の大手メディアが危険地帯へ行くことはない。

しかし、紛争ジャーナリズムは断じて不要なものなどではない。そのため、フリーのジャーナリストが自己責任で危険地帯へ行くしかないのだ。

「戦場ジャーナリスト」の後進が育つとは言い難い状況

日本ではほとんど報じられないが、世界では、紛争や人道的危機など、さまざまな出来事が起こっている。そうした困難な状況に置かれている人々は、その現状を「世界に伝えてほしい」と願っている。だが、こうした現実を「伝えたい」と思っても、日本のメディアが買ってくれることはなかなかない。

それでもジャーナリストが危険な地域へ足を運ぶのは、記録に残さなくてはならない現実があり、それがある種、未来への投資であり責任だからだ。とはいえ、これは現状の日本で理解されることではないだろう。「自己責任」で行かざるをえず、失敗すればバッシングに遭う。今後「戦場ジャーナリスト」の後進が育つとは言い難い状況だ。