6年連続で最高益を叩きだしている東海旅客鉄道(JR東海)。主力の東海道新幹線の需要は伸び続けている。2027年に開業予定のリニア中央新幹線計画も軌道に乗ってきた。そんな中、18年4月、10年近くリニア計画に携わってきた金子慎氏が同社の社長に就いた。金子氏に同社の戦略について聞いた――。

リニア開業後は「こだま」を増発

――会社の現状、課題、展望は。

東海旅客鉄道社長 金子 慎氏

【金子】幸いなことに日本の経済が好調で、鉄道の利用は堅調さを保っている。新幹線の乗客数は、18年3月期は前年比3%増。18年6月に大阪北部地震があったが、その月も17年と同水準の利用者数があった。リニアについては難易度の高い工事から契約を締結し、順次工事に着手している。最優先の課題は一貫して、事故を起こさず、安全を確保することだ。

今は好調でも必ず谷はくるし、逆風も吹く。またリニア建設も大阪延伸まで視野に入れると長く続き、設備投資額もこれから上がっていく。だからこそ、仕事を効率化したり、よりよいサービスを提供したりして、経営体力をつけなくてはいけない。

――新幹線利用者数は伸び続けている。天井は見えているか。

【金子】今は1日47万人が利用しているが、ダイヤはかなり過密。ただ、まだ新幹線の本数を増やす余地はあると思う。リニア開業までは毎年少しずつ乗客数を増やしたい。開業後は、新幹線については東京―大阪を最速で結ぶ「のぞみ」の本数を減らし、逆に多くの駅に停まる「ひかり」や「こだま」を増発したいと思っている。

――18年6月、新幹線内で刃物を持った男が暴れ、乗客3人が死傷する事件が起きた。

【金子】許しがたい事件だった。新幹線を安心して利用してもらうために、新幹線に乗る警備員の数を増やし、犯罪への抑止力を高めたい。また、全乗務員らへの防犯スプレーの配付を完了した。今後は、車内の複数箇所に、防護盾などの装備品を年末までに順次配備していく。