六本木のミッドタウン、汐留シティセンターといったトレンディな場所に、ガラス張りのカラフルなキッチンがある。そこではつねに若い女性たちが楽しそうに野菜を切ったり、肉を煮込んだりしている。キッチンは料理番組の収録スタジオのようにまばゆい照明で照らされ、料理をつくっている女性たちは女優かタレントのように見えてしまう。明るく、美しいキッチンなのだ。

そうしたキッチンを全国に104カ所設置し、料理講座を設けているのがABCクッキングスタジオ。生徒数は現在21万人。業界では最大手である。

全社員4217人の99%が女性。本社も例外ではない。121人中、男性社員はたった19人。

全社員4217人の99%が女性。本社も例外ではない。121人中、男性社員はたった19人。

ABCクッキングスタジオが従来の料理学校と違うのはカラフルなキッチン設備だけではない。従来型の料理学校は白の三角巾と割烹着に身を包んだ生徒たちが、粛然として講師の話を聞き、言われるままに料理をするところだった。いわば「学校」であり、花嫁になるための「修業」道場だったのである。

ところがABCクッキングスタジオは創業者で現社長の志村なるみ氏が「料理学校はサービス業。生徒はお客さま」というコンセプトをつらぬき、大学生のサークル活動のような和気あいあいとした運営に徹している。そのため、「会社帰りに新しいレシピを覚えたい」という女性たちが嬉々として集まってくるのである。

私は丸の内の国際ビルにある本社を訪ね、毎日行われている朝礼を見学した。入って驚くのは女性が多いこと。

朝礼自体はあっさりとしたものだ。企業理念の唱和、社長スピーチ、そして生徒からのエピソード紹介といった内容になっている。気がついたのは女性スタッフの声が大きく、ハキハキしていること。一般企業の朝礼もずいぶんと見学したが、男性の中間管理職は、ぼそぼそとしゃべる人が多い。ところが同社の女性たちは堂々と大きな声で話す。女性の力を感じる朝礼だ。

(尾関裕士=撮影)