『人は見た目が9割』から13年、竹内一郎氏が新たに世に送り出したのが、『人生は「声」で決まる』だ。前著のテーマは「外見」だが、今度は「声」。しかし、著者が一貫して訴えるのは、人間関係で大切なのは「非言語コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)」ということだ。

「自分は一生懸命話しているのに、皆真剣に聞いてくれない、そんな経験ありませんか。それもそのはず。人は相手の話に矛盾を感じた場合、言語情報から信用するのは、わずか7%程度で、残りの約9割は表情やしぐさ、声といった『非言語情報』から相手を判断している。つまり、どれだけ内容が立派でも、声や話し方、表情に力がなければ、話を聞いてもらえないということです」

日本ではとかく「書く技術」は磨くが、「スピーチ」はおろそかになりがちだ。メールやSNSですべての連絡を済ませようとする若者も増えている。だが「声」は本能に訴えるパワーを持つ。それを味方につけるメリットは大きい。

「かつては政治家も田中角栄や吉田茂、小泉純一郎など、声の力で政治を動かしたものです。いまも企業のトップや、各分野の営業でトップセールスを誇る人は、皆見事な声をしています。『知性+声=信頼感・説得力』なのです」

実際に、どれほどメール文化が進んでも、重要案件や商談をメール一本で済ますことはありえない。最後はface to faceで相手を信頼させ説得させなくてはならないのだ。

必ずしも美声である必要はない。まずは自分の声を知り、目指すべき声を考える。人から信頼される声、リーダーの声、優雅な声、自分なりの「理想の声」を手に入れる一助の本として、お勧めの書だ。

竹内一郎
1956年、福岡県生まれ。劇作家・演出家。宝塚大学東京メディア芸術学部教授。著書に『人は見た目が9割』『結局、人は顔がすべて』など多数。
(撮影=石橋素幸)
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