安倍政権が難問に直面している。入管難民法の改正案を巡り、野党だけでなく、自民党の保守派からも反発を受けているのだ。安倍政権の根幹を揺るがすテーマにもなりかねないが、安倍首相は余裕の構えだ。なぜならダメージを食い止める仕掛けを施してあるからだ。その「仕掛け」を解説しよう――。
2018年10月30日、自民党の総務会に臨む(左から)甘利明選対委員長、加藤勝信総務会長、二階俊博幹事長。このうち加藤氏は「ポスト安倍」の有力候補とみられている(写真=時事通信フォト)

「僕を一番応援している人たちが反対している」

「この法案は、どちらかというと、僕を一番応援している人たちが反対しているんだよね」

10月24日の国会召集を前に安倍晋三首相は、衆院に苦笑まじりでこぼすことが多かった。

実際、法案の審査が行われた自民党の法務部会では青山繁晴参院議員ら自民党保守系議員らが連日のように「日本国民にとって外国人をどんどん受け入れるというのが本当に正しいのか。注意してほしい」など異論が続いた。部会は、当初26日の了承を予定していたが、大幅に遅れ29日にずれ込んだ。

法案の概要については、ここでは詳しく触れないが、11月2日に掲載している「産経も批判する安倍政権"移民法"の危うさ」を参照いただきたい。いずれにしても、外国人を大幅に受け入れることで日本の雇用、治安、社会保障に甚大な影響を及ぼしかねない。そして、移民政策はとらないとしてきた従来の政府方針を大転換することになりかねない内容だ。

安倍氏はこれまで、野党や世論の反対にひるまずに特定秘密保護法、安保法制、いわゆる共謀罪を含む改正組織的犯罪処罰法などを成立させてきた。

「身内」から弾が飛んでくる状況は初めて

ただし、今回は今までとは勝手が違う。野党だけでなく身内から弾が飛んでくる状況は初めてのことだ。

大手新聞、テレビなどのメディアの多くは当初、この法案の取材を社会部の法務省担当に任せてきた。しかし、10月中旬ごろから政治部も本格的に参入するようになった。

9月20日の自民党総裁選で健闘した石破茂元幹事長が、自身の派閥を率いて「反主流派」色を鮮明にしていることも念頭に置きながら「移民法政局」に対応できるシフトを整えたのだ。

しかし安倍政権側も、この問題に細心の注意を払い、布石を打っていることも指摘しておきたい。