人手不足が深刻化している。最近では、応募者数を増やすために「履歴書不要」を掲げる企業も目立つ。これまで200件を超える労働事件を担当してきた弁護士の島田直行氏は、「労働事件の99.9%は採用ミスが原因。履歴書の提出は特に中小企業では必須だ」と指摘する。履歴書から応募者の人となりを見抜くコツとは――。

※本稿は、島田直行『社長、辞めた社員から内容証明が届いています』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

求人広告で「履歴書不要」はやめるべき

とにかく応募者を増やすために、最近では「履歴書不要」という求人広告も目にするようになった。たしかに履歴書不要となれば、履歴書作成の手間を省けるので応募者は形式的には増えるかもしれない。でも、「就職」というイベントにおいて、履歴書の作成すら手間だと感じるような人を社長として採用したいだろうか。履歴書の提出は中小企業にとって必要なものだと私は考えている。

中小企業の採用プロセスは、いまもって書類選考と面接が一般的だろう。書類選考においては履歴書が中心になるが、履歴書だけでもわかることは少なくない。いくつか参考になるところを整理しておこう。

手書きの履歴書を見れば、応募者の本気度がわかる

履歴書はできるだけ手書きで提出してもらうべきだ。ワープロで提出されると、修正も容易で、かつどれも似たような印象を受けることになる。これが手書きになるとずいぶんといろんな情報が送付されてくる。字が乱雑に書かれているもの、修正ペンで修正されているもの、枠から文字がはみ出しているものなど。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/bee32)

履歴書は、会社と応募者が最初に接点を持つ部分だ。とくに人は第一印象に引っ張られるところがあるから、なおさら履歴書は重要だ。正しい履歴書の書き方は、ネットで調べればいくらでもわかる。それすらできないとなると、応募をしてきた人が本気で入社したいと考えているのか怪しいところだ。

履歴書の書き方がずさんな人は、他の社員や取引先とトラブルを起こしやすい印象がある。こういったタイプは、自分の世界というものを持っていて、「僕には僕のやり方がありますから、周囲が僕に合わせるべきでしょう」となって柔軟性が低いからだ。

「そういう人を育てあげるのが会社というものでしょう」と思う人もいるかもしれないし、否定する気はない。ただ、採用するのであれば、教える側としてそれなりの負担をともなうことは覚悟しないといけない。