女優・三田佳子さんの次男・高橋祐也被告が、また薬物事件で逮捕された。逮捕はこれで4度目だ。精神科医の片田珠美氏は、「三田さんは次男に多額の小遣いを与えてきたと報じられている。報道が事実なら、三田さんは次男の薬物依存を助長する“イネイブラー”である可能性が高い」という。親子が「共依存」に陥るメカニズムとは――。

38歳の息子の保釈金300万円を女優・三田佳子は払ったのか?

女優の三田佳子さん(77)が、覚せい剤取締法違反の罪で東京地検に起訴された次男の高橋祐也被告(38)のために300万円の保釈金を支払ったのではないかと取り沙汰されている。

今回の次男の逮捕を受け、三田さんは所属事務所を通じて「親としては、もう力及ばずの心境です。このうえは、本人ももう40手前ですし、自らの責任と覚悟をもって受け止め、そして罪を償って、生き抜いてもらいたいと思います」とコメント(写真=時事通信フォト、2016年10月)

三田さんの次男が薬物で逮捕・起訴されたのは今回で4度目である。これまで逮捕のたびに三田さんが保釈金を払ってきたので、今回もやはり母親ではないかとの憶測から、「甘すぎる」という厳しい声が上がっている。

また、三田さんがかなり多額の小遣いを次男に渡していたという報道もある。さらに、次男は女性問題や暴力沙汰をしょっちゅう起こしていたのに、これまで表沙汰にならなかったのは、そのたびに三田さんが示談金で解決してきたからだとも報じられている。

一連の報道が事実とすれば、三田さんは次男にお金を与えるだけでなく、次男が次々に起こすトラブルを処理することを続けてきたわけで、典型的なイネイブラー(enabler)と考えられる。

イネイブラーとは、依存症患者の周囲にいて、薬物やアルコールを購入するお金を与えたり、不始末の尻ぬぐいをしたりする人物であり、「支え手」と訳されることが多い。

イネイブラー本人は、依存症から抜け出す手助けをしているつもりである。だが、実際には正反対の結果を招く場合がほとんどだ。三田さんも、次男が惨めな思いをしないように、そして犯罪に手を染めないようにという親心から、多額の小遣いを渡していたのだろうが、それが覚せい剤を購入するために使われたわけだから、むしろ依存症を助長したといえる。

依存症患者と「イネイブラー」は共依存に陥りやすい

困ったことに、依存症患者とイネイブラーは共依存に陥りやすい。共依存関係においては、イネイブラーは過剰な献身を繰り返すことによってしか、イネイブラーは自分自身の存在意義を確認できない。たとえば、アルコール依存症の夫を持つ妻が、酔って暴れる夫のDVに「自分さえ我慢すれば」と耐えながら、要求されるたびに酒代を渡す。

「母親と息子」も共依存に陥りやすい。三田さんの次男も、遊ぶ金を両親にせびり、拒否されると暴れて刃物を突き付けたこともあると報じられているので、共依存関係を疑わずにはいられない。

もしかしたら、売れっ子だった三田さんは、「忙しさにかまけて母親らしいことをしてあげられなかった」という後悔の念や「私が女優だったから寂しい思いをさせた」という罪悪感にさいなまれているのかもしれない。

そのせいで、次男に小遣いを与え、トラブルを処理し続けることによって、母親の役割を果たせるし、罪滅ぼしもできると思っているのなら、絵に描いたようなイネイブラーである。

もっとも、イネイブラーがそこまで献身を捧げても、依存症患者は感謝するどころか、むしろ敵意を募らせることが少なくない。なぜかといえば、イネイブラーに依存した状態は不本意で、情けないからだ。だから、自立できないのも、何をやってもうまくいかないのも本当は自業自得のはずなのに、その悔しさや怒りをすべて依存対象であるイネイブラーに向ける。

ときには、「お前のせいでこうなった」とイネイブラーを責めることもある。それでも、経済的にも精神的にもイネイブラーに依存せずにはいられない。その葛藤ゆえに、敵意を抱きながら依存する敵対的依存の状態が続く。