日本を代表する巨大企業・パナソニックは、2018年、記念すべき創業100周年を迎える。今後パナソニックはどの方向へ進むのだろうか。その陣頭指揮を執る津賀社長へのインタビューをもとに、経営学者の長田貴仁教授が考察する。

100周年は、通過点にすぎない

日本では人だけでなく企業も長寿である。「創業百周年」と記された名刺を差し出されると、日本人であれば「おめでとうございます」と思わず口にしてしまう。2017年時点で、創業100年以上となる老舗企業は、全国で3万3069社ある(東京商工リサーチ調べ)。しかし、意外にも皆が知っている大企業に限ると、100周年を迎える企業の数はそれほど多くない。さらに比較的新しい産業である電機・電子業界に限定すると、100周年を迎える企業はさらに少ない。

パナソニック社長 津賀一宏氏(時事通信フォト=写真)

電機メーカーは紆余曲折を経たものの自動車とならぶ日本の基幹産業となった。ところが、00年代に入り製造装置が標準化され、それを購入さえすればどのような企業でも薄型テレビなどのデジタル家電を生産できるようになった。その結果、韓国メーカーに続き、台湾メーカーが参入。今や、スマートフォンでは中国が急速に力をつけてきた。電機メーカーで100周年を迎えた、と聞くと「よくぞ続いたな」というのが筆者の正直な感想である。

シャープは12年9月に創業100周年を迎えた。その数年前までは、「液晶のシャープ」として一世を風靡していたのに、(液晶)パネルへの過剰投資があだとなり、同年3月期に過去最大の最終赤字を計上した。

18年3月に創業100周年を迎えるパナソニックもシャープと同様(プラズマ)パネルへの過剰投資が災いし、12年3月期に7721億円の巨額赤字に陥った。その直後の同年6月に社長に就任したのが津賀一宏氏だ。本業の不振は深刻で、13年3月期も7542億円と2期連続の巨額赤字を計上した。

このような痛みを経験しているだけに、津賀社長は「創業100周年それ自体は、単なる通過点にすぎません」といたって冷静である。ベストセラーになった佐藤愛子さんのエッセイ『九十歳。何がめでたい』のパロディではないが、「100周年。何がめでたい」といった心境か。たしかに、1975年に100周年を迎えた東芝は、その後どうなったかは、もはや詳述するまでもない。