デキる営業マンは、特別な才能の持ち主なのだろうか。そんなことはない。そう考えるのは「なぜ成果にバラつきがあるのか?」という問いを立てられていないからだ。経済・経営ジャーナリストの桑原晃弥氏は、「トヨタが『レクサス』の販売店を日本でゼロから立ち上げた際の目標設定がヒントになる」という――。

※本稿は、桑原晃弥『トヨタ式5W1H思考』(KADOKAWA)を再編集したものです。

天才だけ集めて会社をやるのは無理

営業の世界は、今でこそいろいろな改革が進んでいますが、かつては根性主義が幅を利かせ、一握りの「営業の天才」とその他大勢に分けられる世界でした。優れた手腕で抜群の営業成績を上げる一握りの人間がいる一方で、それ以外の人間は「あいつは特別だから」というひと言で努力をあきらめていたものです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/justocker)

あるビールメーカーの子会社A社は、スーパーなどのルートセールスを一手に請け負っていましたが、大勢いるマーケットスタッフの営業力にバラつきが多いことが悩みの種でした。

スタッフは1人あたり30~40店舗を担当して、在庫を確認したり、販売促進のアイデアを提案したりしていましたが、抜群の成績を上げるスタッフがいるかと思えば、機械的に各店を訪問するだけで、さしたる成果を上げられないスタッフもたくさんいました。

「そんなにバラつきがあるのならダメなスタッフをやめさせて、できるスタッフを雇えばいいじゃないか」という声もありましたが、そんな“天才”だけを集めて会社をやろうとすれば、毎月、たくさんの人を雇い、できる人間だけを残さなくてはいけません。それではブラック企業になってしまいます。

そうならないためには何が必要かを考えた結果、ひとつの問いが出てきました。

「なぜスタッフによってこれほどの成果の差が生まれてくるのだろうか?」

これは、営業には向き不向きがあって、その差はどうしようもないと思い込んでいたら、そもそも生まれもしなかった問いでしょう。この、最初のWHYを生むことが、何よりも重要です。「当たり前だ」「仕方がない」「どうしようもない」と思っている課題に改めてWHYを与えることで、解決の道筋が見えてきます。

スタッフの間の違いを洗い出す

多くの職場でいえることでしょうが、できるスタッフができないスタッフの何倍もの時間働いているわけではありません。どちらも同じように働きながら、成果に差が出るものです。

とすれば、「能力」や「資質」以外の何かがあるのではないか。もしあるとすればそれを活かせば、「できない」といわれているスタッフの能力や成果も上げられるのではないか。そう考えるのが、トヨタ式5W1H思考です。