実に微妙な人事である。自民党総裁3選を受けて安倍晋三首相が行った内閣改造と党役員人事。注目の小泉進次郎氏は党厚生労働部会長になった。「入閣か、無役か」と注目を集めていただけに、中途半端な印象は否めない。なぜ小泉氏は「中途半端なポスト」を自ら希望したのか――。
2018年9月16日、街頭演説で、縄県知事選挙候補者の佐喜真淳氏と並ぶ小泉進次郎氏と菅義偉官房長官(写真=時事通信フォト)

うれしさも、悔しさも「中ぐらい」

最初から安倍氏の勝利が確実視されていた先月の総裁選では、勝敗よりも、党内随一の人気者、小泉氏の動向に注目が集まった。安倍氏につくか。挑戦者・石破茂元幹事長を応援するか。それとも態度を明らかにしないのか……。このあたりの経緯は「安倍側近が"進次郎はこっち"と強がるワケ」や「安倍3選で"小泉大臣"がウワサされるワケ」などで詳しく紹介しているので、参照いただきたい。

簡単に説明すると、小泉氏は石破氏に1票を投じた。ただし、そのことを明らかにしたのは投票直前の20日昼。焦点となっていた党員・党友による地方票の投票は、締め切った後だった。石破氏は、早い時期に小泉氏の支援を受け、2人3脚で全国を行脚してブームを巻き起こしたいと考えていた。支援を得たのはありがたいが、2人で遊説はできなかった。

石破氏は党員投票で全体の45%を確保し、善戦した。もし、小泉氏が1週間早く意思表明していたら党員投票では安倍氏を上回っていたかもしれない。そういう考えると、うれしさも「中ぐらい」だった。

一方、安倍氏からみれば、小泉氏が敵側に回ったことは不愉快だが、損害は最小限に食い止められた。こちらも悔しさは「中ぐらい」だった。

橋下徹氏は「残念。全く意味不明」と切って捨てた

総裁選の議員投票直前に石破氏支持を打ち出したのは熟慮に熟慮を重ねての決断だった。石破氏を立てつつ、安倍氏と決定的な対立を回避する絶妙のタイミングといえる。

ただ、その結論の出し方は、歯切れがよい発言と行動が売りの普段の小泉氏の手法とは違う。むしろ「足して2で割る」従来型の政治手法に似ている。橋下徹元大阪市長がテレビ番組で、小泉氏の決断を「残念。全く意味不明」と切って捨てたのも、そういう空気を言い当てている。