共和党が過半数を失えば、トランプ政権は厳しい

10月10日、米国の株式市場が大きく下げた。これを受けて、翌日のアジアの主要株式市場は総崩れとなり、日経平均株価は前日の終値から1000円超下落する場面があった。そうした株安の連鎖を受けて、米国の株価は一段と下落し、一時、“世界同時株安”の連鎖に歯止めが掛からない状況になった。

米国の株価を下落させた要因の一つは、何と言っても米国中間選挙の不透明感だろう。中間選挙では、下院で民主党が過半数の議席を獲得するとみる専門家が多い。仮に与党である共和党が過半数を失うようだと、トランプ大統領の考えに沿って政策を運営することはかなり難しくなる。それは、米国の政治と経済の先行きが一段と見通しづらくなる。

基本的に、投資家はリスク(不確実性)を避けたい。中間選挙の不透明感に加えて、金利の上昇懸念が高まっていることも、株価を不安定化させるよう要因だ。さらに、米・中の貿易戦争などさまざまな不安要素が顕在化する中、大手投資家の利益確定を狙った売りが株価下落のトリガーになったと考える。

2018年10月11日、大幅続落で取引を終えたニューヨーク証券取引所のトレーダーら(写真=EPA/時事通信フォト)

さらに「プログラム取引」が一斉に売り注文を出した

もう一つ重要なのが人工知能などを用いたプログラム取引の影響だ。ビッグデータの活用が進むにつれ、多くの投資家が人工知能にデータを分析させ、ごくごく短時間での利得獲得を狙っている。プログラム取引が一斉に売り注文を出したことが株安を増幅させた。

それが顕著に表れたのが米国のIT先端銘柄だ。それは米国のITセクターの業績拡大期待が高まりづらくなっていることの裏返しでもある。当面、米国を中心に株価の上値は抑えられ気味になる可能性がある。それは、わが国の株価動向を考える上でも重要なことだ。

2月の株価急落の後、米国の株式市場は緩やかに上昇してきた。8月末にはIT銘柄の多いナスダック総合指数が最高値を更新した。また、9月中旬には、S&P500指数も最高値を更新し、その後も全般的に米国の株価は高値圏で推移した。中間選挙が近づく中、10月上旬の相場環境は多くの投資家にとって利益を確定する良い機会だったといえる。これが10月10日、11日の米国株式市場の下落の背景要因だろう。