ファミリーマートの朝礼はシンプルだ。内容はスピーチと接客用語の唱和だけ。時間はわずか5分。月曜から金曜まで毎朝、行われている。

スピーチのテーマはもてなしやホスピタリティとあらかじめ決まっている。それはファミリーマートが会社を挙げて大切にしていることである。

総合企画部の岩崎浩マーケティング室長は「朝礼の内容を決めるのに時間をかけて話し合いました」という。

「企業ブランドの重要性をあらためて考える場にした」(岩崎室長)。本社でも、最後に接客用語を唱和する。

「企業ブランドの重要性をあらためて考える場にした」(岩崎室長)。本社でも、最後に接客用語を唱和する。

「2005年に全社プロジェクトとして『ファミリーマートらしさ』推進活動を行いました。そのなかで、朝礼の時間を使って、社員ひとりひとりがお客様へのもてなし、さりげない気づかいを日々、確認することにしたのです」

ファミリーマートでは、朝礼のスピーチに3つの役割を与えている。ひとつは日ごろの「もてなし」に対する「気づき」の機会を増やすこと。スピーチは全員に回ってくる。内容を考えるためには、世の中で行われているもてなしに気づいていなくてはならない。

2つ目は一日を気持ちよく始めること。社員が話すのは「気持ちよいサービスを受けて嬉しかった」といったことだ。聞く側はすがすがしい話で一日が始まり、その結果仕事もはかどる。

3つ目は社内コミュニケーションの向上。ほかの社員のスピーチを聞いていると、机を並べる仲間が日ごろ、何を考えているか、休日に何をして過ごしているかがわかる。

私がさらに気がついたのは司会役を設けていないことだ。時間になると、その日の担当はさっと出てきてあいさつし、スピーチを述べる。儀式的な色彩のない機能的な朝礼である。また、スピーチ担当にしてみれば朝礼のすべてを取り仕切るわけだから、緊張感も高まる。ファミリーマートの朝礼から学ぶべきはテーマをもてなしに絞ったこと、そして、シンプルで機能的な運営をしているところだろう。

(尾関裕士=撮影)