独身寮を18年ぶりに復活させた

7階建て、戸数361戸。2018年3月、伊藤忠商事の独身寮が新設された。場所は横浜市の日吉駅から徒歩3分で、駅から本社へは約30分で通える。現在は約250名が入居しており、19年の4月には新入社員が入って、ほぼ全室が埋まる予定だ。

新設された独身寮。敷地面積は約4600平方メートルという大きさだ。

弊社が独身寮を開設するのは、18年ぶりである。かつては横浜市の山手に300名程度を収容する大規模の独身寮があった。それが2000年、業績悪化に伴って売却。以降は寮を持つのではなく借りる方針を採り、70名程度が住めるマンションを4つ借り上げていた。

しかし場所が分散していたため、ある寮は駅近で会社まで40分程度で通えるのに、ある寮は通勤時間が1時間以上、またある寮は駅からのアップダウンが激しかったりと、通勤格差が生まれた。すると条件の悪い2つの寮は、2年目になると出てしまうケースが多くなり、また分散したことで一体感が失われていった反省も生まれた。そこで今回、4つの寮を統合し、社有の独身寮を復活させたのである。

大規模な独身寮をつくる狙いは、昔と変わらない。基本は「ひとつ屋根の下」。寝食を共にすることで、タテ・ヨコ・ナナメの一体感を高め、仕事に役立てるということだ。

入居年数の上限は8年から4年に短縮

商社は縦割りで、繊維なら繊維、機械なら機械の業務をずっと担当していく。セグメントが異なれば仕事の種類がまったく違い、共通の基盤があまりない。タテの関係は職場で、ヨコの関係は同期でつながっていくが、異なるセグメントの1つ上の先輩のような、ナナメのコミュニケーションを取るのが非常に難しいのだ。

寮の横断的なネットワークがあれば、ナナメでもつながりやすくなる。自分とは違うセグメントの先輩と大浴場や食堂で交流したり、寮を出た後、まったく知らない部署でも寮生を介してすぐに連絡できたりする。また近年、産業構造が変わったことで、これまで遠かったセグメントが接近するようになった。食料と情報など、異なるセグメントが交じって新しい事業を始めようとするときは、必ずナナメの線が生きてくる。そこを下支えするのが寮のネットワークなのだ。

そのため、ネットワークに個人差が生まれないよう、新入社員は、実家が都心にあっても、原則は入寮してもらう方針である。そして結婚や、独立して暮らしたいなど、出ていく理由や時期は社員に委ねている。一時期だけでも住んでもらえば、寮の一体感を体験でき、後々、仕事をしていくうえでの大きな財産になる。

また、寮生が住むことができる上限の8年を、新しい入居者から最大4年に短縮した。入社5年目以降、実務研修生として積極的に海外に派遣する方針としており、それまでの短い期間で太いネットワークを構築してもらいたいと考えている。