この国のかたちをつくりあげた、有名無名な勇者たち73人の残した轍に、混乱の世を生きる現代人の道標を探す。あなたに似たリーダーは見つかるだろうか。

天下人3代を除いた名だたる戦国武将。例えるなら、中小企業の社長だろうか。誰と組み、誰を敵に回すか。彼らが乱世をどう生き抜いたか、どう天下取りに絡もうとしたか。現代を生きる私たちも、戦国武将の誰かに感情移入することができそうだ。『真田太平記』は四方を敵に囲まれた信濃の真田家の奮闘を描いた大作。天下人3人を含めて多くの戦国武将が絡み合うあたりも読みどころだ。戦国もの全般に、そういったクロスオーバーの魅力がある。

面白いのが上杉謙信、武田信玄の宿命のライバル。戦の天才同士だが、領土を拡大して天下を収めようとする信玄に対し、謙信は現状に自足している。信玄は謙信を相手にしなければよいのに、腹の内が読み切れず、常にライバルの存在に腐心する。野心満々な人間は、自足した人間が理解できないのだ。タイプが違いすぎる武将が鎬を削り、歴史の最もスリリングな側面が凝縮している時代である。

父子2代による国取り物語【斎藤道三】
『ふたり道三』宮本昌孝・著

美濃の国取りで知られる梟雄・斎藤道三は、1人ではなく、実は親子2代の2人だった。最新の学説に則って、新解釈で描かれた戦国巨編の傑作。「大事を成すに1代では難しくても、2代で挑めば可能になると」と細谷氏。

己の領土を守り抜いた謙信の正義感【上杉謙信】
『天と地と』海音寺潮五郎・著

戦国武将には珍しく領土的野心はない。しかし戦には強い。手腕はあるのに領土を広げすぎない。謙信という稀代の正義漢を描く。

父を追放、怒涛の進撃。野心に生きる【武田信玄】
『武田信玄』新田次郎・著

暴君の父を追放、甲斐藩主となった信玄は怒涛の進撃を始める。「野心の信玄と正義の謙信、どちらのタイプに惹かれますか」。

一族の結束で、乱世を生き残る【真田一族】
『真田太平紀』池波正太郎・著

真田家が、親子一丸となって乱世を生き抜く。

戦国時代のロストジェネレーション【伊達政宗】
『臥竜の天』火坂雅志・著

天下取りに絡めなかった世代に生まれたジレンマ。

武断派にしてバランス感覚もよし【加藤清正】
『加藤清正』海音寺潮五郎・著

豊臣家の行く末を思う清正の波乱に満ちた人生。

独自の文化を築き繁栄を享受した一族【前田家3代】
『われに千里の思いあり』中村彰彦・著

加賀百万石の繁栄を築いた前田家3代の知謀と戦略。

戦国好きには有名な孤高のリーダー【立花宗茂】
『孤闘――立花宗茂』上田秀人・著

武勇の誉れ高く義を貫いた最後の戦国武将の涙。

野太いパワーでのし上がる【津軽為信】
『津軽風雲録』長部日出雄・著

無頼漢の群れを使う奇襲戦など、痛快な権謀術数。

小大名の見果てぬ夢【亀井茲矩】
『琉球は夢にて候』岩井三四二・著

流浪の民から大名に。戦塵の果てに見た夢は……。

(構成=須藤靖貴 撮影=宇佐見利明)