「昔の女性は今よりもっと生きづらかったのでは」

「実家は1856年創業のせんべい屋で、母は性暴力救援の活動もしているフェミニスト。『洗剤のCMにエプロン姿の女性ばかり登場するのはおかしい』。幼いころからそんな議論を家でしていました」

そんな、はらだ有彩さんが社会の“異常”を感じたのは新卒入社した広告会社で働き始めてから。出張先のホテルで取引先の男性に突然部屋に行っていいかと迫られた。

「仕事で信頼関係を築けていたと思っていたのに、びっくりしました。ほかにも、上司に『早く帰って彼氏にご飯作らなくていいの』とか言われて。嫌だなって思う発言をする人は普段はいい人だから、なんでこんなこと言うのかな、と落ち込んでいました」

ふと「昔の女性は今よりもっと生きづらかったのでは」と疑問を抱いた。歴史あるせんべい屋の実家には古いものが多く、おのずと古(いにしえ)の物語に答えを求めた。

「社会には、積み重ねられて地層みたいになっている時代時代の空気感があると思って、昔話を読み漁りました」

慣れ親しんだ昔話の女性たちは、予想以上に社会的な抑圧に苦しんでいた。だが、彼女たちの心情や境遇を想像すると、時空を超えて互いに労わり合っている気分になった。深夜の女子会のように。