「利益になるかどうか」で政策を選んでいる

感染症が流行したとき、甚大な被害を受けるのは「健康弱者」だ。今年7月以降、「風疹」が首都圏を中心に流行している。風疹の場合、健康弱者は妊婦のお腹の中の赤ちゃんだ。

先天性風疹症候群と呼ばれ、妊娠初期の女性が感染すると、ごくわずかな確率だが、赤ちゃんが難聴や心臓病、白内障になる危険がある。妊婦とその家族は、注意が必要だ。

国立感染症研究所が9月19日、今年の患者数が計496人に上ったと発表した。すでに昨年1年間の患者数の5倍を超えたことになる。

ところで翌20日、自民党総裁選の投開票が行われ、予想通り安倍晋三首相が連続3選を果たし、引き続いて総裁と首相を務めることが決まった。

安倍政権は風疹の流行や健康弱者の問題をどう考えているのだろうか。

総裁選の論戦からは、風疹という言葉は聞こえてこなかった。

これまでの国会答弁を含めて思い起こすと、確か、安倍首相は「もり・かけ疑惑」に絡む加計学園設立の経緯を国会で説明するなかで「鳥インフルエンザの流行が懸念され、獣医師を増やす必要がある」という趣旨の答弁を繰り返していた。

しかし、獣医師を増やせば、養鶏場で鳥インフルエンザの発生を防げるわけではない。そこまで強弁したのは、なぜだろうか。それは刎頸の友である加計学園の加計孝太郎理事長を利するためだ。それは自らの利益につながることでもある。きっとそのうち、風疹の流行も利用するはずだ。

高病原性鳥インフルエンザの発生を受け、現地対応の準備をする新潟県職員(2016年11月30日、新潟県上越市)(写真=時事通信フォト)

患者の大半が成人で、特に30代以上の男性が多い

話を風疹に戻そう。

妊娠の予定がある女性とそのパートナーには、ワクチン接種が求められる。ただし妊娠すると、お腹の赤ちゃんへのリスクからワクチン接種はできない。

大半の患者は熱も発疹も3日ほどで治る。そのため三日ばしかともいわれる。症状の出ない不顕性感染のケースも多い。

しかし決して侮ってはならない。

風疹ウイルスは、感染者のくしゃみやせきで人にうつる。潜伏期間は2~3週間程度。感染力はインフルエンザよりも強い。治療薬はなく、治療は症状に応じた対症療法に頼っている。それゆえワクチンの接種が欠かせない。

近年の流行では患者の大半が成人で、なかでも30代以上の男性が多い。厚生労働省は国の制度変更で定期接種対象から外れた30~50代の男性を中心に、ワクチン接種を徹底するよう呼び掛けている。