二階氏は「いろんな人生観がある」と好意的に発言

もはや「新潮45事件」といってもいいだろう。

自民党の杉田水脈衆院議員が「新潮45」(8月号=編集兼発行者・若杉良作)に書いた「『LGBT』支援の度が過ぎる」の中で、「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子どもを作らない、つまり『生産性』がないのです」と書いて、大きな批判が巻き起こった。

自らレズビアンであることをカミングアウトした立憲民主党の尾辻かな子衆院議員は、「LGBTも納税者であることは指摘しておきたい。当たり前のことだが、すべての人は生きていること、その事自体に価値がある」とツイッターで批判。

昨年、日本人男性と結婚したことをブログで公表したロバート・キャンベル東京大学名誉教授は、「杉田氏のような思考は、性的指向を伝えられずにいる日本の若者たちを苦しめてきました」と指摘。その上で、性的"嗜好"は、杉田議員のいうような脱着可能なアクセサリーのようなものではなく、「性的"指向"は生を貫く芯みたいなもの」だと、自らの覚悟を示して見せた(注:強調は筆者)。

だが、こうした差別発言には慣れて麻痺している二階俊博・自民党幹事長は、「人それぞれの政治的立場、いろんな人生観がある」と発言して失笑を買った。

この背景には、杉田議員が日本維新の会から自民党に鞍替えして、安倍晋三首相の出身派閥に所属している安倍チルドレンの一人だという忖度もあったのかもしれない。

特別企画「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」を掲載した「新潮45」(2018年10月号)

「新潮45」の常連執筆者も編集部を批判

だが、これに意を強くしたのか、杉田自身もツイッターで「(先輩議員から)間違ったことをいっていないんだから、胸張ってればいいよ」などとつぶやいたのである。

その後、自民党はウェブサイトに、「杉田議員の寄稿文に関しては、個人的な発言とはいえ、問題への理解不足と関係者への配慮を書いた表現があることも事実」だと掲載したが、それは「新潮45」の発売から2週間もたってからだった。

朝日新聞、毎日新聞は7月25日付で、「LGBT 自民の認識問われる」「杉田水脈議員の差別思考 国民の代表と呼べない」と、こうした差別発言の出てくる自民党の体質を厳しく批判する社説を掲載した。

「新潮45」の常連執筆者であるコラムニストの小田嶋隆までもが、次のように編集部の姿勢を批判した。

私がむしろ当惑を感じたのは、議員の文章に対してよりも、雑誌の編集姿勢についてだった。
具体的に申し上げるなら、当該の発売号をパラパラとめくりつつ
「おいおい、『新潮45』は、ついにこのテの言論吐瀉物をノーチェックで載せる媒体になっちまったのか」
と、少しく動揺せずにはおれなかったのである。

日経ビジネスオンライン「杉田水脈氏と民意の絶望的な関係」2018年7月27日