これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、アパグループの元谷外志雄代表のインタビューをお届けしよう――。

利益率 他ホテルの約6%に対し、驚きの30%

収益面で国内最強のホテルチェーンを誇るアパグループ。東京都心への集中出店を武器に、2017年度も売上高1161億円、経常利益350億円と増収増益を維持。しかも多くのホテルの利益率が約6%に対し、同社は30%と驚きの高収益を稼ぎ出す。その裏にはどんな人材活用法があるのか。代表の元谷外志雄氏に人材論を語ってもらった。

──人手不足が顕在化し、人材登用が難しい時代になりました。

わが社の従業員は全体で4600人くらい。そのうち半分強は正社員です。18年の新卒社員は275人、毎年増加しています。その中で、早い人は5年目で支配人になります。その意味では促成栽培です。最初に小さなホテルからスタートして、力を発揮すると次にもう少し大きいホテル、さらにいい業績を上げるとまた大きいホテルへと、頑張る人にはどんどん大きなステージを与えていく。もしホテルが1つしかなければ、いくら優秀な人でも、上の人が辞めなければ出世できません。しかしアパは新しいホテルがどんどん増えていますから、ポストはいくらでもあるのです。

アパグループ代表 元谷外志雄氏

中途採用も新卒も待遇は同じ。差別はありません。買収したホテルの社員も、希望者は全員受け入れています。新卒も中途採用も買収先の社員も、優秀な人にはどんどん大きな仕事をしてもらいます。だからこそ、従業員のモチベーションは高められ、仕事にやりがいが持てる。それぞれがキャリアの目標を持てることが、わが社の強みなのです。

──従業員にはどのような裁量を与えていますか。

各支配人に事業の根幹である価格の裁量権を与え、需給関係を鑑みながら社内ルールの範囲内で価格を設定するようにしています。安くすれば稼働率は高くなり、100%を達成することもできます。しかし収益は単価×稼働率ですから、安いだけではいけません。現在の情勢や過去のデータを分析して、収益を最大化するような値付けをすることが重要になってくるのです。

──そうしたセンスをどうやって教育しているのですか。

わが社が採用しているドミナント戦略は、支配人の能力向上に貢献しているかもしれません。たとえば新宿に9つ、六本木周辺に8つなど、1つのエリアに集中出店をしているため、オーバーブッキングやキャンセルが発生した場合、お客様を両店間で融通することがあります。そうしたエリア内での調整は、支配人同士が連携しますから、優れたサービスや価格設定の感覚を学ぶ機会にもなる。またホテルが次々とできるため、人事異動が頻繁にあるのも強みです。いろいろな支店を回ると、上司や環境が変わることが刺激になって、本人も変わっていきますから。