定年後の60~74歳までの15年間は、元気で好きなことができる「人生の黄金期間」。このとき充実した第2の人生を送るには、50代から準備しておくことが重要だ。8人の実体験をお伝えしよう。8人目は「元カフェ共同経営者で、いまの収入は介護職で月25万円前後」という61歳のケースについて――。

※本稿は、雑誌「プレジデント」(2017年11月13日号)の特集「金持ち老後、ビンボー老後」の記事を再編集したものです。

杉原義男(仮名)さん 61歳 元カフェ共同経営者
開業:2013年(14年廃業) 形態:個人商店 開業資金:500万円 従業員:2人(当時) 収入:いまは介護職で月25万円前後

「こんなはずではなかったのに」

カフェは駅から徒歩3分ほどのところにあったが、人通りの動線から少し外れた横丁で、なかなか人目につかない。不動産業者の「いい物件」という口車に乗り、自分の目で人通りを確認しなかったことも杉原さんは悔やむ。

5年ほど前の起業を思い出すたびに、杉原義男さん(仮名)は後悔の念にかられる。

大学卒業後、ホテル・レストラン業界で企画や管理畑の仕事に携わってきた杉原さん。52歳だった2008年、老舗ホテルの系列ホテルに企画の責任者として、経営再建に入り、先行きに手ごたえを感じていた。

しかし、東日本大震災の影響で、12年春にホテルの閉鎖が決定される。そんな杉原さんは、「横浜でカフェを共同でやらないか」と、知人から誘われた。オセアニアのヨーグルトの国内製造・販売のライセンス契約を取り、それを売りにしたアンテナショップ兼カフェを個人商店の形で開くという。

実際にヨーグルトを口にすると、クリーミーな食感で確かにおいしい。1個当たり200円と通常商品より倍近い値段だったが、食品の展示会で大手食品卸会社から何社も引き合いがあった。そして知人が1000万円、杉原さんは500万円の資金を出して、カフェを開業することになる。

しかし、躓きはすぐにやってきた。