ソフトバンクグループの創業者・孫正義氏は、壮大なビジョンを掲げることで知られる。だが、強みはそれだけではない。ソフトバンクの社長室長などを務めた三木雄信氏は、「孫社長は資金調達もうまい。そのマネジメント力は、組織やチームとしてだけでなく、自分をプロデュースしいくうえでも活用できる」という。自分の夢や目標を達成するために、天才経営者が実行してきた驚きの方法とは――。

アルバイトをする時間は、事業プラン作りに使え

起業の相談に来る若者や学生の中には、「アルバイトで500万円ためたら起業しようと思います」という人がいます。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Natali_Mis)

それに対する私のアドバイスは、「アルバイトをする暇があったら、今すぐ事業プランをもっと練って、今すぐ始めなさい」です。

お金をためている間に、自分が思いついたアイデアを誰かが先にビジネス化してしまうかもしれません。アルバイトをしている間に世の中の環境が変化し、思い描いていた事業プランが陳腐化してしまうこともあります。

ですから、起業したいならとにかく早く始めるべきです。

そう話すと相手はたいてい不思議そうな顔をして、「元手になる資金がないと、起業できないじゃないですか」と言いますが、そんなことはありません。今の時代は、面白いビジネスのアイデアや事業プランがあれば、お金は集まってくるからです。

最近は、アイデアや計画の段階で出資を決めるベンチャーキャピタルが増えています。個人的に若手起業家に投資するエンジェル投資家も増えています。

日本政策金融公庫の「新創業融資制度」のように、新たに事業を始める人が無担保・保証人なしで融資を受けられる公的制度もあります。つまり、魅力的な事業プランさえあれば、お金を貸してくれる人はいくらでもいるということです。

アイデアは出すが、コストは負担しない

逆に言えば、もし事業プランを説明してもお金が集まらないのなら、それはビジネスのアイデアやプランがいまいちだから、という可能性が高いのです。自前のお金がないなら、知恵でお金を集める。これはまさに孫社長が実践してきたことです。

そもそも孫社長は、自前のお金で事業を始めたわけではありません。ソフトバンクの創業資金になった一億円は、自分が発明した携帯型自動翻訳機をシャープに売り込んで得た契約料でした。これも試作機は作っていましたが、実際にはほぼアイデアを買いとってもらったようなものです。

しかも、試作機を実際に作ったのは、カリフォルニア大学バークレー校の研究者たち。もちろん、元々のコンセプトを発案し、研究者たちを口説いたのは孫社長だったが――。