早稲田大学文学学術院の現代文芸コースに通っていた元大学院生の女性が、渡部直己元教授からハラスメントを受けた問題で、早大の調査委員会が未公表の報告書で、渡部元教授の行為だけでなく、元コース主任の男性教授が被害女性に対して「口止めを受けていると感じる発言があった」ことや、女性が駆け込んだ早大のハラスメント防止室の対応についても「不適切だった」と認めていることがわかった。1対1のハラスメントは、なぜ組織的な問題となったのか。早大のセクハラ問題、第5弾をお届けする――。
早稲田大学ハラスメント防止委員会のウェブサイトより。

「退学者は相談を受けられない可能性がある」

一連の問題を巡っては、被害女性は昨年4月、渡部元教授からハラスメントを受けことを、当時コース主任だった男性教授に相談していた。しかし、その際、男性教授は被害者にハラスメントがあったことを外部に漏らさないよう口止めした疑いがもたれていた。

また、女性がハラスメントを受けた後に駆け込んだ早大のハラスメント防止室についても、防止室の相談員が女性に「退学者は相談を受けられない可能性がある」と説明するなど、被害者への対応方法に問題があったとみられている。女性はこれらの問題について、渡部元教授から受けたハラスメントと併せて大学側に苦情を申し立てていた。

早大は7月に渡部氏の教授解任を発表したが、その後も大学の調査委員会は渡部元教授のハラスメントだけでなく、元コース主任男性教授やハラスメント防止室の対応について調査を続けていた。このほど、調査委員会が報告書をまとめ、被害女性に渡した。

「ちょっと面倒なことは、これから巻き込まれるのは嫌だな」

報告書には、口止めした教授について被害女性が「口止めを受けていると感じる発言があった」と記されている。報告書によると、男性教授は昨年4月、東京・目白の喫茶店で被害女性と、被害女性と元同級生の女性から相談を受けた。その際に「ちょっと面倒なことは、これから巻き込まれるのは嫌だな」と話したことを男性教授は認めている。

また、男性教授は「(被害女性に)隙があるように見える」「あまり外では言わない方がいいよ」「こういうことがおきちゃったら結構叩かれちゃうことになるかもな」と発言したことを示唆している。とくに「こういうことがおきちゃったら……」という発言について報告書は「申立人には無関係な教員・組織側の利害について述べたものである」「暗にコース外にハラスメント行為が知られることへの危惧を表明しているものであり、ハラスメントの相談を学生から受けている教員そしてコース主任として不適切な言動であると言える」と指摘している。

そのほか、報告書によると、男性教授は渡部元教授の「俺の女になれ」という発言について、過去のコース内のセクハラ事案と比べて「ハラスメントに当たるかグレーゾーンだ」と思っていたという。報告書は「男女の肉体関係を求める言動が教員の発言としては許されないものであることについての認識を欠いており、そのような認識の欠如がその後の相談において申立人の心を傷つけることにつながったことは否定できない」としている。