これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、森トラストの伊達美和子社長のインタビューをお届けしよう――。

森トラスト社長が注目する日本政府の「提唱」

日本の都心部の大型複合開発やホテル&リゾート事業を手掛けてきた総合不動産デベロッパーの森トラスト。2020年の東京五輪に向け、東京が大きく変わるなか、同社は虎ノ門エリアで高級ホテルや分譲レジデンスが入る高層オフィスビル「東京ワールドゲート・虎ノ門トラストタワー」のプロジェクトを進めている。父に同社会長の森章、祖父に経済学者・森グループ創始者の森泰吉郎を持つ伊達美和子社長に、これからの「人材論」を語ってもらった。

──近年の激変する環境のなかで気になる点、働き方や時代を生き抜く力についてどのように考えますか。

森トラスト 社長 伊達美和子氏

日本政府が提唱する「ソサエティ5.0」(科学技術政策の基本指針)や「コネクテッドインダストリーズ」(IoTや人工知能を支援する戦略)に注目しています。新しい社会がどうあるべきかを提案する時代になったのは大きな変化です。従来は縦割りの組織や団体が多くを占めましたが、これからは横のつながりや連携が重視される。IoTによる「自律、分散、協調」型の思考が社会の潮流になり、そういう方向への旗振りが始まったと感じています。

私はバブル崩壊後の1996年に社会に出ましたが、以降も日本経済は長く低迷が続きました。しかしここにきて、一挙に社会も働き方も加速度的に変化しています。

これからの時代を生き抜く原理原則は、技術や知識だけではなく「考える力」「企画する力」「実行する力」の3つを養うこと。そうすれば、どんな環境や局面にも臆せず立ち向かい、力を発揮できると思います。

──2016年に現職に就いてから、どんなことに注力したのでしょう。

就任時から、組織を強化していくことを目的に人材育成に力を注いできました。まず全員が共通の目標を持つことが重要だと思ったので、就任時の挨拶でも「3つの力をつけるためのサポートの仕組みを考えていくので、いろんな意見をお互いキャッチボールしよう」と宣言しました。研修制度や表現する場を整備するなど、社員どうしが横のつながりを持てる仕組みを充実させてきました。