「障害年金」は病気やけがで生活や仕事などが制限される場合に支給される公的保障だ。だが、同じ病気でも症状によりお金が出るケースと出ないケースがある。ファイナンシャルプランナーの浜田裕也氏が、50代の夫婦から「発達障害からうつ病になった無職の30歳長男」について相談を受けたところ、親亡き後の家計構築について「支給されるかどうかわからない障害年金」をアテにしていたことがわかった。浜田氏が示した解決の方法とは――。

30歳無職の長男が小遣い受け取り拒否をする理由

私は社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーとして、ひきこもりの子供をもつ家族や支援者を対象にした講演会を全国で行っています。講演会の内容はお金の話が中心で、子供の生活設計の立て方、国民年金や障害年金などについても解説しています。

その日も家族向けの講演会を終えて退室しようとしたとき、あるご夫婦から声をかけられました。

「うちの長男の障害年金について相談したいのですが……」

聞くところによると長男は現在30歳で無職。一日のほとんどを家の中で過ごしているようです。立ち話である程度うかがった後、ご夫婦に私の連絡先をお伝えし、後日ご相談を受けることになりました。

当日、父親(55)は仕事のため、母親(54)ひとりでいらっしゃいました。

家族の希望で、今回は長男の障害年金について相談したいということで、そのことについて長男本人の了承も得ている、ということでした。

【家族構成】
父 55歳 会社員
母 54歳 専業主婦
長男 30歳 無職 今まで働いた経験なし

現在は父親の給与収入のみで生活しています。財産は、戸建住宅と現金預金が数百万円。今回は家族の生活設計の相談ではなく、長男の障害年金の相談だったので、あえて深追いはしませんでした。

次に長男に関してです。長男は現在30歳で無職。兄弟姉妹はいません。うつ病を患い月に2回ほど通院しています。通院しない日は一日中家の中で過ごしています。

家族のお金が減ることが不安なためか長男はお小遣いをもらうことを拒否しており、欲しいものを買うこともほとんどないそうです。親御さんとしては、体調がよいときに買い物などに出かけて行って少しでも社会との接点をもってほしいと思っているようです。

漢字を書くことが苦手で、忘れ物が多かった

私はさらに過去のこともうかがいました。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/taka4332)

長男が小学生の頃、漢字を書くことがものすごく苦手で、何度練習しても書くことが難しかったとのこと。また、学校の宿題をよく忘れたり、忘れ物が多かったりして先生によく注意をされてしまったようです。また、それらが原因で友達にからかわれることも多かったとのことでした。

その様なお話が当時同居していた義理の母(ご主人の母)の耳にも入り「あなた(母親)のしつけがなっていないからだ」「甘やかしすぎだ」「このまま大人になったら一番困るのはこの子だ。あなたが何とかしなさい」などと厳しい叱責を受けることもしばしば。

ご主人からも「もっと厳しくつけないとだめだ。俺は仕事で忙しいからお前がなんとかしろ」などと言われてしまい、母親は八方ふさがりになってしまいました。