自民党総裁選の主役は誰だろうか。3選が確実と言われる安倍晋三首相でも、挑戦者・石破茂元幹事長でもない。ましてや出馬に意欲を見せながら推薦人が集まらず「いつ撤退するか」に注目が集まる野田聖子総務相でもない。国民的人気では永田町随一の小泉進次郎筆頭副幹事長だ。進次郎氏を味方に付ければ戦いは有利になる。各派はあらゆる策をろうして37歳の若手議員の取り込みに血道を上げている――。

インタビューに答える自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長。後ろに見えるのは、地元・横須賀の名物「スカジャン」。(写真=時事通信フォト)

総裁選に出馬しないのに24%の人がラブコール

読売新聞社が8月24~26日に行った世論調査の数字を紹介しておこう。「次の総裁は誰がふさわしいと思いますか」の問いに対し、安倍氏と答えた人が36%、石破氏22%、そして進次郎氏が24%だった。

ここ数カ月に行われた同趣旨の調査では、進次郎氏がトップに出ることも少なくなかった。今回の調査では安倍氏に後れをとった形だが、総裁選に出馬しないのに24%もの人からラブコールを受け続けているのは驚きだ。

単純計算すれば安倍氏の36%に進次郎氏の24%が乗っかれば過半数をはるかに超える支持を安倍氏は固めることになる。逆に石破氏が進次郎氏の支持を得られれば、一発逆転も見えてくる。

進次郎を取り込んで「とどめ」を刺したい安倍サイド

進次郎氏は、味方か敵か。安倍氏の3選が既成事実になりつつある中、情勢を激変させる唯一の波乱要因が進次郎氏の存在であることは、既報の「安倍総裁3選を阻止するただひとつの方法」で紹介した通りだ。その構図は今も基本的には変わらない。ただし、ここへ来て安倍氏サイドが戦略を軌道修正し始めた。

進次郎氏は2012年の総裁選では石破氏に投票した。今年8月上旬ごろまでは今回も石破氏を支援するのは織り込み済みで、選挙期間中に石破氏の応援の前面に出るかどうかに注目が集まっていた。言い換えれば、安倍氏側は進次郎氏に対し「石破氏に投票するのは許すから、選挙戦ではおとなしくしていてくれ」というスタンスだった。

ところが最近、安倍氏側は進次郎氏の支持取り付けに本腰を入れ始めた。現段階で議員票では石破氏を圧する勢いの安倍氏。進次郎氏を取り込めば、唯一の波乱要因を消せる。選挙戦が始まる前に、とどめを刺してしまおうという戦略だ。