私立中学の入試問題で「複雑な家族関係」をテーマにした出題が増えている。東大合格者数トップの開成中では今年、問題文に「専業主夫」が登場した。名門女子校の桜蔭中でも3年前に「ジェンダーの壁」がテーマになった。中学受験専門塾ジーニアス代表の松本亘正氏は「名門私立でも『父はサラリーマン、母は専業主婦』という家庭が減っていることが影響しているのだろう」という。いま難関校を目指す小学生には、どんな常識が求められているのか――。

小学生が「父:専業主夫、母:キャリアウーマン」を読解

2018年、開成中学の入試問題に「インスタグラム」という言葉が出てきたことが、塾関係者の間で話題になっている。

『木曜日にはココアを』(宝島社)の中の第2章「きまじめな卵焼き」の文章が開成中で出題された

問題文で取り上げられたのは、小説『きまじめな卵焼き』(青山美智子著)。主人公は幼稚園児の子供を持ちつつ、夫に家事と育児をすべて任せて、仕事中心の生活を送るキャリアウーマンだ。「専業主夫」の夫は、自作の絵をインスタグラムに投稿しており、それがきっかけで個展を開くことになった。夫が数日間留守にするため、主人公は子供の弁当を作ることになる。だが、子供の好物の卵焼きが、どうしてもうまく焼けない。そこから、自分のアイデンティティがゆらぎ、夫の個展が失敗することすら望むようになる――。

問題文では、「絵なんか売れないで。誰にも認められないで」という部分に線が引いてあり、主人公の気持ちを問うている。中学受験の最難関校は、小学6年生に「大人の視点」を持つことを求めているのだ。

この開成中の物語文は2つの点で特徴のあるものだった。

(1)専業主夫とキャリアウーマンの母という家族構成であること。
(2)インスタグラムが物語文の中にも登場したこと。

「離婚」や「母子家庭」を扱った出題も目立つように

※写真はイメージです(写真=iStock.com/kohei_hara)

まず、(1)について。近年の中学受験「国語」では、物語文に登場する人物・家族の構成が複雑になっている。重松清の短編小説『卒業ホームラン』のような典型的な家族像での親子愛をテーマにしたものは減っていて、「離婚」や「母子家庭」を扱った出題も目立つ。

たとえば、2008年の駒場東邦中の問題文でも取り上げられた『タイドプール』(長江優子著)は、次の一節から始まる。

「インターホンがなったのでドアをあけたら、お母さんがとどいていた」

物語のテーマは、小学5年生の女の子と、父の再婚相手「マコさん」とのかかわりだ。主人公は次第に、マコさんが朝はいわゆる「継母」(血のつながりのない親)で、夜は「マコさん」(大人の女性)だと気づく――。そんな複雑な家族関係が、中学入試の素材として当たり前のように使われているのである。