終戦記念日を迎えるたびに靖国神社への閣僚の参拝問題が取りざたされるが、一方であまり知られていない事実がある。全国に80ほどある旧陸軍墓地が政府や自治体から放置され、荒廃一歩手前だという。ここに光を当て、国立の追悼施設などをつくるのが「靖国参拝」を唱える政治家たちの務めではないか。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(8月21日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

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クソの役にも立たない政治家の「ファッション強気」

国会議員は、外交問題になると、とにかく強気の姿勢を示す。弱腰だと支持が集まらないと思っているのであろう。まあこのような政治家の姿勢は世界共通のところもあるけど。

写真=iStock.com/TkKurikawa

しかし、ほんと国会議員のこのような「ファッション強気」はクソの役にも立たないし、何の解決策も生まない。

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8月15日の靖国神社への参拝でも国会議員は強気の姿勢を示すのが好きだ。

もちろん国を守るために命を落とした方々へ、感謝と尊崇の念を表することは当然だ。これは世界各国共通のこと。このようなことが国をあげてきちんと行われることで、兵士も国のために命をかけて戦うことができる。

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しかし、靖国神社には敗戦国である日本に特有の問題がある。いわゆるA級戦犯が合祀され、中国・韓国が、日本の政治指導者が靖国に参拝することに対して猛烈な反発をするという問題だ。

僕も無責任なコメンテーター時代は、戦勝国が勝手に決めた戦犯というものに日本が従う必要はない、靖国参拝に反対するのは中国、韓国くらいで世界の多くの国は靖国参拝に賛成してくれている、などと主張していた。

ところが現実の政治を経験すると、無責任なコメンテーターの主張がそうは簡単には通らないことを目のあたりにする。

実際、あの安倍さんでさえ、一度靖国参拝しただけで、その後参拝していない。今では安倍内閣の閣僚全員が参拝しなくなった。何の責任も負っていない一国会議員のときには、あれだけ靖国参拝を強く主張していた稲田朋美さんも、責任を負う防衛大臣に就任した途端、靖国参拝は止めざるを得なかった。言い訳のためにわざわざジブチへ海外出張に行ったくらいだ。天皇陛下も靖国に足をお運びにならない。また、政治指導者は他国を訪問した際、その国の兵士を祀る墓地へ足を運ぶ。日本の政治指導者もアーリントン墓地などに足を運んで花を捧げている。これも世界で共通の常識。ところが、アメリカなどの世界に影響力のある国家の指導者は日本を訪れた際、靖国参拝をしない。

結局8月15日に、靖国神社に参拝をするのは、何の責任も負っていない国会議員だけである。彼ら彼女らが参拝しても、中国、韓国は猛反発しない。それは、そのような国会議員が参拝しても日本や中国、韓国にとって何の影響力もないと考えているからである。そしてそのような国会議員に限って、100人くらいの集団を組み、「みんなで靖国に参拝しよう!」と張り切って参拝する。中国、韓国から猛批判のある中、その批判をものともせず、自分たちは信念を強く貫いているんだと自己陶酔している。

あのね、一国会議員の皆さん。責任を負っていないあなたたちが、いくら参拝しようが中国や韓国は気にしていないの。だからそんな大げさに参拝しなくても、普通に行きなさいよ。別にわざわざ集団を組んで、示威する必要はない。そもそも死者を弔う参拝は、一人で静かに行うものなんじゃないのかね。本当に信念を貫くというなら、内閣総理大臣、首相になってからやってみろっていうんだ。

日本の国会議員の本当の責務は、内閣総理大臣、特に天皇陛下が靖国参拝されていない現実をしっかりと課題として認識し、参拝できるようにその課題解決策を考えることだ。

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