これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、J.フロント リテイリングの山本良一取締役 代表執行役社長のインタビューをお届けしよう――。

私は「銀座では百貨店はやらない」と決めた

縮小傾向が続く百貨店市場。2017年の全国百貨店売上高は5兆9532億円で、既存店ベースで前年比0.1%増と3年ぶりにプラスに転じたものの、2年連続で6兆円を割り込む厳しい状況が続いている。そうしたなか、大丸松坂屋百貨店を傘下に持つ業界2位のJ.フロントリテイリングは、従来の小売業の枠にとらわれない「マルチサービスリテーラー戦略」を推進する。山本良一社長は、過去の実績、成功体験に固執していては生き残れない、発想を大きく転換する「戦略思考」が重要だと力説。そして、次世代を担う人材の育成にも力を入れている。

──17年4月に東京・銀座にオープンした大型商業施設「GINZA SIX」が好調です。

J.フロント リテイリング 取締役 代表執行役社長 山本良一氏

変化が激しい今の時代に、過去50年の百貨店の成功体験は通用しません。現状を少しずつ変えるのではなく、発想をドラスティックに転換する必要があるのです。そこで私は「銀座では百貨店はやらない」と決め、松坂屋銀座店の跡地はこれまで日本になかったラグジュアリーモールに変えました。我々も本を正せば呉服屋だったわけで、それが100年前に百貨店という業態に転換しました。同じように、今大きな転換期を迎えているわけです。

──営業利益をはじめとする収益力では業界トップですね。

当社は新たなグループビジョン「くらしの『あたらしい幸せ』を発明する。」を掲げ、さらに17~21年度のグループ中期経営計画を策定しました。そのビジョンを実現するために私たちは、不動産など事業領域の拡大と既存事業の変革を戦略的に進めていく方針です。21年度には連結営業利益560億円、連結ROE8.0%以上を目指しています。