どうすれば「お寺の住職」になれるのか。28歳で寺を開いた僧侶がいる。埼玉県越谷市にある「源妙寺」の住職・渡邊源昇氏は、サラリーマンの家に生まれながら、15歳で出家。信用金庫から融資を引き出し、土地を買い、本堂を建てて、自分の寺をつくった。お寺の子でもない人が、ゼロから住職になるまでには、何があったのか。その収支を公開しよう――。
源妙寺内部(画像提供=源妙寺)

越谷市にお寺を作ったワケ

――渡邊さんの親族に仏教関係者はいないそうですね。僧侶を志したきっかけは何だったのでしょうか。

長崎県の寺町に生まれた私にとって、子どもの頃からお寺は身近な存在でした。そこで開かれる日曜学校にも参加していましたし、同級生や先輩にお寺の子どもも多かった。お坊さんになろうと決めたのは中学時代です。当時の私は、ほとんど学校に行っていなくて、近所の大人たちに白い目で見られていました。でも、そんな私を、同級生のお父さんであるお寺の住職さんだけは受け入れてくれたんです。そのお寺でいろいろとお手伝いをさせていただくうちに、「お坊さんって面白そうだし、かっこいいな」と思うようになりました。

――その後、どこかのお寺に勤めるのではなく、ご自身でお寺を開かれたのはなぜでしょうか。

一番の理由は、楽しそうだったからですね。もっとも初めは、どこかのお寺に勤めたり、養子に入ったりすることを考えていました。でも、総本山を卒業して、都内のお寺に勤め出してから「国内開教制度」の存在を知り、それが転機となりました。

開教時には宗門から助成金が出る

――新たにお寺を始めるにあたり、宗派からサポートを受けられる制度ですね。埼玉県越谷市という場所を選んだ理由は何だったのでしょうか。

越谷市にはお寺がたくさんあるのですが、その多くが真言宗で、日蓮宗のお寺が少なかったことですね。それから私が調査をした平成26年の時点で、越谷市の人口は33万人を超えており、埼玉県の市町村の中で5番目に人口が多い市でした。しかも年々増加傾向にあるわりに、人口密度は13番目。世帯にファミリー層が多く、持ち家率も7割近い。ほかの市町村に比べて、そうした伸びしろがあったことが決め手になりました。

――渡邊さんのご著書『お寺はじめました』(原書房)を拝読して、開教する際に宗門から助成金が出るということを知って驚きました。

「布教助成」という手当が出ます。期間は3年ないしは4年間で、金額は月20万円です。他にも家賃補助が月15万円まで出ます。それを超える分は自己負担になります。最初は一軒家を借り、そこを拠点に「日蓮宗越谷布教所源妙寺」をスタートさせました。