副業には慎重だった大企業だが、「申請をすればOK」という会社がちらほら出てきた。今後、副業OKの大企業が続出すれば、「副業マーケット」ができあがるわけだが、当の大企業社員たちは、何をすればいいのかわからないし、やりたいこともない、仕事をくれそうな相手もいない、というケースが多いだろう。こういった状況は、大企業社員が持っているスキルを利用したい中堅中小企業にとっては、チャンスかもしれない――。
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「待遇のいい中小企業」なら、人が獲れる

競争が激しく、終身雇用制度を維持できなくなった大企業では、高度成長期のように給与は右肩上がりではなくなった。一部では、コストのかかる中高年社員に、早期退職が促されている。人生を100年生きる時代が迫るなか、定年退職後に年金だけで暮らせるわけもなく、人生の後半戦にどう備えていくかが、これからのビジネスパーソンには大きな課題だ。こうした状況のもと、副業を認める法人が増えてきた。

その一方、企業の人手不足が深刻だが、中堅中小企業にとって優秀な人材を獲得することは、昔から容易でなかった。待遇面で大企業と遜色がなく、自由闊達な中堅中小企業は存在するが、いかんせんその存在が知られておらず、応募する人材は少ない。

大企業ビジネスパーソンは「つて」がない

大企業には多彩な仕事や専門部門が存在し、そこで働く社員の中には優秀な人材がいる。だが彼らの人間関係は非常に狭く、社内と限られた取引先くらいしかつながりがない。副業を認める大企業が増えても、そこに働く社員たちは中堅中小企業の経営者や人事担当者とのパイプはなく、副業が探せないのが実情だ。

また中堅中小企業も、取引がある大企業の担当部署とは接点があっても、他部門の人材との交流は限られる。有能な大企業の人材に、業務を副業として依頼するという発想もそもそもない。

大企業ビジネスパーソンは副業という手段を用いて、自分の専門性を生かせる仕事ができれば、自信が持てる上にセカンドキャリアとしての布石が打てる。有能な人材を求める中堅中小企業は、中途採用や再雇用先として正社員にする前に、副業を通じて本人の能力と実力が判断できる。両者が納得すれば、その後の仕事の仕方も相談すればいい。