自殺の原因の9割以上はうつ病だ。それもうつ病で自殺をする場合、初回で遂行してしまう例が多い。つまり、死にためらいがない。だから、有名人が突然自殺したというような記事を読むと「なぜあんなに成功していた人が?」と思ってしまう。外の姿しか見えない他人にとっては、その予兆はわからないのだ。

わかりやすい「うつ」の予兆。一刻も早く専門家に診てもらう<br><strong>作家・医師 米山公啓</strong>●1952年生まれ。聖マリアンナ医科大学助教授を98年に退職した後、本格的な著作活動を開始。医学ミステリー、小説などを手がける。
わかりやすい「うつ」の予兆。一刻も早く専門家に診てもらう
作家・医師 米山公啓●1952年生まれ。聖マリアンナ医科大学助教授を98年に退職した後、本格的な著作活動を開始。医学ミステリー、小説などを手がける。

硫化水素の自殺は、本人が非常に苦しむだけではなく、ガスであるから、家族や周囲の人を巻き込むことが大きな問題なのだ。だからこそ、防がねばならない。

自宅でそういった危険な薬品を発見したときは、むしろ予兆としては、非常にわかりやすい。家族のだれかが、その薬品を見せ、自分の心の状況をアピールしていることになるからだ。

問題はそれからであろう。そんな家族にどう接すればいいのかわからないものだ。一般的には「励ましてはダメだ」というような知識はあるかもしれない。

しかし、重要なことははやく専門家に診てもらうことである。家族内で話し合いをしている限り、なかなか解決にはつながらない。このあたりに、うつ病の治療の問題点があるのだ。

うつ病の8割は薬で治すことが可能であるし、ある専門家はうつ病はすべて治ると言い切っている。つまりうつ病の問題点は、治るとか治らないということではなく、家族の異常を発見したら、家族だけでそれを解決しようとせず、早く医者に診せることが非常に大切である。

もちろん医者にかかるといっても、心療内科、精神科、神経内科などに受診すべきだ。というのも、うつ病の症状が典型的であれば、家族でも疑うことはできるだろう。たとえば、やる気がない、食欲がない、眠れないということであれば、うつ病ではないかと心配になるはずだ。危険な薬品が置いてあれば、だれでも自殺やうつ病ということを想像できるはずだ。