下心はほぼ相手に見透かされている

褒めすぎたなと思うのは、そもそもあなたが「褒めるのが苦手」だからではないでしょうか。

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褒め方に自信がないからこそ、褒めたのを取り消したい、「厳しく指導すべきだったのでは」と思ってしまう。しかし、あらためて「さっきは褒めすぎた」「調子に乗るなよ」と言い出すのも、なかなか難しい。

日本人は、「褒めるのが下手」と言われてきました。厳しくするのが躾、愛のムチが人を育てる。そんな文化が根付いていたからです。なので、日本人は自己肯定感が低くなりがちです。そのことが、仕事で過重な精神的ストレスを抱える一因になったり、燃え尽き症候群などに繋がっているのが現実です。

心理学の見地から言えば、「褒める」ことは非常に重要です。心配しがちな「褒めすぎ」は、厳密に言うとありえません。褒めることが成長を止めることはない。「褒めると調子に乗る」と思うかもしれませんが、調子に乗っているとは文字通り、パフォーマンスがいいということ。歓迎すればいいのです。「調子に乗って失敗した」と見えても、本質的な原因はほかにあることのほうが多いもの。具体的なミスに目を向けたほうがいいでしょう。

褒めるのが苦手な人は、得てして褒めることから見返りを求めてしまっている。心理学では「取引」と呼びますが、「よい上司と思ってほしい」「褒めたから俺のために行動しろ」などという下心は、ほぼ相手に見透かされています。

褒めるとは、相手の「価値」を見つけて伝えることです。成果や努力、そして変化を見つけて認め、口に出して伝える。褒めることは、「しっかり見てくれている」と相手に安心感を与えることになります。そうすることで、職場を安全な環境にし、信頼関係ができ、会社や取引先にも波及する。結果的にメリットが生まれるというわけです。それを認識することから始めましょう。