企業内の女性リーダーが増えない原因はなにか。現在、企業の役職者に占める女性の比率は、「係長」は約5人に1人、「課長」は約9人に1人、「部長」は約16人に1人。女性比率は上位の役職になるほど下がっていく。しかも、日本総研の調査では、東京圏で働く女性の多くは管理職への登用を希望していないという。なぜ、昇進・出世を嫌がるのか――。

管理職への登用を望まない女性は「86%以上」

内閣府「男女共同参画白書 2018年版」によれば、常用労働者100人以上を雇用する企業における役職者に占める女性の比率は、全体的に増加傾向であることが明らかになっています。しかし、職位別の比率を見ると、係長級18.4%、課長級10.9%、部長級6.3%。上位の役職になるほど、女性の比率が低くなっています。

今回は人材紹介・再就職支援サービスを行うパソナ キャリアカンパニーの「女性リーダーに関する調査2015」と、日本総合研究所の「高学歴女性の働き方に関する調査2017」、さらに主任以上(係長、課長、部長含む)の役職を務める女性に対して筆者が行ったインタビューに基づいて、女性リーダーのさらなる活躍(昇進)のために必要なことを述べてみたいと思います。

【1:女性リーダーの活躍に必要な職場環境の改善】

日本総合研究所では、2015年3月に東京圏で暮らす25~44歳の女性約2000人(有効回答数1828人)に対する調査を、また2017年3月には追跡調査(有効回答数783人)を実施しました。

2017年の追跡調査の結果、就業している女性(546人)のうち、管理職への登用を希望しない人の数は471人で、実に86%以上に達しました。登用を希望しない理由を尋ねたところ(複数回答可)、「出世・昇進に対して関心がない」(48.4%)、「私生活(育児・介護含む)の時間を重視したい」(47.8%)、「長時間労働を前提とした働き方は望まない」(45.2%)が約半数程度を占めていました。労働時間の長さや家庭との両立が難しいことを理由に、管理職への登用を希望しない女性の姿がうかがえます。

「昇進すると助けてくれる人もいなくなる」

筆者が行った女性リーダーのインタビューでは、今後、女性がさらに昇進・活躍する上で職場に改善して欲しいことについて質問し、以下のような回答を得ました。

「ワーキングママとして仕事と家庭の両立がしやすいように、フレックス制や時間単位休暇の制度を導入して欲しい」(40代、SE職)
「打ち合わせや社内向けの報告書作成などの非効率な業務を減らして欲しい。今でも業務量が多いのに、昇進をすると、助けてくれる人もいない中で、『○○(役職)なんだからやってもらわないと困る』と上席者に言われるのが目に浮かび昇進へのモチベーションが下がる」(40代、事務職)

勤め先の女性の登用に関する問題への指摘もありました。

「女性活躍というブームに踊らされのではなく、長期的な視点かつ適材適所で役職者を人選すべきと感じる」(40代、事務職)
「女性の登用はかなり進んでいるが、公平公正な評価・処遇が徹底されるように、人事評価の方法を改善して欲しい」(40代、法人営業職)

多くの企業で女性の登用に向けた施策が進められる一方で、女性リーダー自身も様々な問題意識を持っています。上位の役職に昇進したいと思う女性リーダーを増やすためには、職場の満足度調査などを通じて、上記のような問題意識を丁寧に拾い上げ、適宜施策を軌道の修正を図る必要があると感じます。