記録的な猛暑のなか、夏の甲子園が始まった。地方大会では熱中症で倒れる選手、観客が続出したが、それでも炎天下の大会を強行する日本高野連や朝日新聞社は「プレーヤーズ・ファースト」の概念を誤解している。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(8月7日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

日本のスポーツ界は大丈夫か?

写真=iStock.com/LeoPatrizi

一般社団法人日本ボクシング連盟の山根明会長の話題が世間を賑わせている。山根会長のユニークなキャラクターが完全にテレビ向きで、面白おかしく取り上げられるネタも豊富。当のボクシング選手や関係者には迷惑な話だけど、しばらくはこの話題が続くだろうね。

しかし報じられていることが真実だとしたら、日本のアマチュアボクシング界もグチャグチャな状態。ほんと一生懸命やっている選手が可哀そうだ。ちょっと前は大相撲の世界や女子レスリングの世界が問題になったし、日大アメフト部の問題はまだ続いている。他のスポーツ界は大丈夫なんだろうか?

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それぞれのスポーツ競技団体では、たいていそのスポーツ経験者である元選手が指導部として君臨している。ゆえに、やっぱり日本のスポーツ問題の根源は、選手に対する指導の在り方、選手の育て方になってくるね。

そして指導は連鎖する。選手は自分が受けてきた指導方法が正しいものとして、次に自分が指導者になったときには、その指導方法で後輩を指導する。そしてその指導を受けた選手は、またその指導方法で後輩を指導する。親のしつけが子供、孫に連鎖するのと同じだね。

だからこそ、一部スポーツではかなり改善してきているところもあるみたいだけど、幼少の頃から学校で、素人の指導者に指導される日本の学校スポーツの在り方を抜本的に見直さなければならない。

2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催される。これから東京オリンピック・パラリンピックに向けて日本のスポーツ界は動き出すので、指導方法の在り方や競技団体の運営方法を抜本的に検証するにはいい機会だ。

指導は科学的・合理的なものでなければならない。当該スポーツスキルの指導のみならず、指導者になるための指導も必要になる。そのためには素人指導が横行している学校スポーツからスポーツを切り離す作業がどうしても必要だ。今は学校スポーツ界では名門・強豪校と言われる学校でも、その指導者は指導者としては素人同然の者が多い。どれだけ有名な選手であっても、指導者としての技術・ノウハウは別物で、専門的にきっちりと学ばないとプロの指導者にはなれない。欧米ではそのようなことを学ぶ場がきっちりあるんだけど、日本には少ないね。

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