これまで自己負担分は約9万円だったが……

2017年10月1日現在、日本の総人口は1億2671万人。そのうち65歳以上の高齢者は3515万人で、高齢化率は過去最高の27.7%を記録した。急速に進む高齢化社会に対応するため、ここ数年、矢継ぎ早に打ち出されているのが医療・介護分野の制度改革だ。そのひとつが70歳以上の人の「高額療養費」で、17年8月~18年8月にかけて段階的に見直される。

写真=iStock.com/gerenme

高額療養費は、患者が負担する医療費の自己負担額に一定の上限を設けることで、医療費が家計の大きな負担にならないように配慮した制度だ。たとえば70歳未満で一般的な所得の人なら、医療費が100万円かかっても、高額療養費を申請すると自己負担分は約9万円になる。

非常にありがたい制度だが、厳しい保険財政を少しでも健全にするために、70歳以上の負担も見直されることになったのだ。ただし、すべての人が負担増になるわけではない。

現在、行われている医療・介護分野の制度改革は、13年8月に出された「社会保障制度改革国民会議」の報告書に沿って行われている。報告書では、「給付を受けるのは高齢者、負担するのは現役世代」という従来の構造を見直して、年齢に関係なく給付と負担のバランスの取れた全世代型の社会保障にしていく必要性を訴えている。

つまり、高齢者でも、一定額以上の所得がある人は、相応の負担が求められることになった。その一方で、報告書には「低所得層への配慮」という言葉も繰り返し使われているため、所得の低い人への負担増は行われず、据え置かれることになった。具体的にどのように見直されたのか見てみよう。