リッチな老後を迎えられる人と、そうでない人。将来の明暗を分けるものはなにか。それはあなたが意識せずに行っている月々の出費や日々の習慣である。今回、4つにテーマにわけて、識者に改善案を示してもらった。第1回は「教育」について――。

※本稿は、雑誌「プレジデント」(2017年11月13日号)の特集「金持ち老後、ビンボー老後」の記事を再編集したものです。

「子供が望むなら」“教育費は聖域”と考える家庭

同世代の2人の子を持つ2組のご夫婦。将来の明暗を「教育費」が分けることがあります。

写真=iStock.com/urbancow

GOOD家夫妻は、小中高大と国公立出身。だから、子どもの進学についても私立は一切念頭にありません。自宅近くの公立中に通う中3の長男と中1の次男ともに補習塾のみ。とはいえ、首都圏の国公立大に現役で合格するとなると、それなりの準備は必要。大学受験のための塾代だけは、今から蓄えています。また子ども2人とも学資保険に入っており、18歳のときに200万円ずつ受け取れますので、大学4年間の授業料のかなりの部分をこれで賄えます。

一方のBAD家では、幼児期から複数の習い事。中1の長女を「校風がよくて安心だから」と、私立中高一貫校に進学させました。すると小4の長男も中学受験をしたいと言い出した。本来ならここで、長男には中学受験をあきらめさせるべきでした。なぜなら、B家は老後に備えた蓄えがゼロに等しかったのですから。

しかし、結局は長男にも受験塾へ通うことを許してしまいました。こうした家庭は、子どもの教育にかかる費用を“聖域”と考えていて、「子どもが望むなら」と、どんどんお金をかける傾向があります。

仮に何とかお金を工面して、長男も私立中高一貫校へ進学させたとしても、長女が大学に進学する頃、貯蓄が乏しいB夫妻の老後に対する不安は一気に高まるはず。夫が50代となり、役職定年や再雇用などで給与が大きく引き下げられる現実が目の前に迫って初めて、そこに気づくのです。

すると頼りたくなるのが貸与制の奨学金。しかし、月12万円ずつ借りると4年で約600万円。子どもたちにそんな大きな借金を背負わせていいものでしょうか。それに奨学金は、子どもの口座に振り込まれる点が曲者。子どもは自由に使えるお金と勘違いし、飲み代など交際費に使ったり、ひどいときは友達にごちそうしたり。特に私立校生は、周囲に裕福な家庭で育った友達が多いですから、そんな金銭感覚になりかねません。

十分な収入や貯蓄のない家庭の親御さんのなかには、「うちは給料を貰える防衛大学校に行かせる。奨学金なんて借りなくても大丈夫」と気軽におっしゃる方も。しかし防衛大は人気も偏差値も高いし、向き不向きもあります。誰もが選べる進路ではありません。

夫が65歳になったとき、G家は退職金を除いても2000万円近い貯蓄がある一方、B家は500万円にも遠く及ばないかもしれません。