日本は天才的なプログラマーや技術者をもてはやす

スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾスにマーク・ザッカーバーグ……。ベンチャーと言えば、天才的な才能を持っているがゆえに成功した。そんなイメージを持っている人が多いようです。しかし、果たして本当にそうでしょうか。

写真=iStock.com/metamorworks

日本でも、自らベンチャーを起業した天才的なプログラマーや技術者をもてはやす傾向があります。しかし、そのほとんどが失敗に終わっているのです。なぜでしょうか。それは彼らが、本当の意味での経営者ではないからです。むろん天才的な才能はベンチャーにとって必要なものです。ただ、彼らがマネジメントに適しているかと言えば、そうとは限らない。名選手、必ずしも名監督にあらず。監督には監督向きの素質を持った人がなるべきであり、天才的な技術者はCTOやチーフエバンジェリストを務めたほうが成功の確率は高くなるのです。

ベンチャーには成長ステージが上がるにつれ、新しいビジネスモデルやテクノロジーが要求されます。つまり、柔軟に変化していくことが重要であり、天才であるがゆえに、いつまでも自分のつくった技術に固執していると失敗する確率は高くなってしまうのです。

最近は、そうした天才たちに投資をしようと、大企業がコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)を設立するケースも目立っています。CVCとは、大企業が設立したベンチャー・キャピタル(VC)や大企業が主体となって、ベンチャー企業に出資する投資ファンドのことです。こうした動きは2000年代初頭のベンチャーブーム時にもありましたが、当時のCVCは経験不足から、かなりの失敗を重ねることになりました。

しかし、今は当時と明らかに状況が違います。SNSを中心に新しい技術やサービスを持った視野の広いベンチャーが続々と登場し、ベンチャー企業が格段に増え、その生存率も高くなっています。大企業もCVCを通じて、自前のコアビジネスとのシナジー効果が生まれそうなベンチャーに積極的に投資するようになっています。その成功例の1つと言えるのがKDDIのCVCです。

KDDIは対ドコモ、対ソフトバンク、そして新たに現れてきたMVNO(他社から無線通信インフラを借り受けて、音声通信やデータ通信のサービスを提供する事業者)など競争相手が増えていく中で、CVCを通じて、非通信系とも言うべき領域を強化しようとしています。実際、KDDIは18年4月までにAI、IoTなど44社のベンチャー企業に出資しています。