会社の経理部員や人事部員たちは、何を考え、どこを見ているのか。お金の問題を甘く見ていると、「想定外」の落とし穴に落ちることもある。「プレジデント」(2018年3月19日号)では、11のテーマについて識者にポイントを聞いた。第10回は「多重債務、自己破産」について――。

多重債務を抱えた人、自己破産した人は会社にバレるのか

会社員が多重債務を抱えている。または自己破産した場合、出世に影響が出るか。まずは、これらの場合に会社に知られるかどうかを考えてみましょう。

多重債務の場合。支払いの原資は給与なので、滞納が続けば、債権者は訴訟を提起し勝訴判決を得たうえで「給与の差し押さえ」をすることがあります。その場合、裁判所から会社に差押命令が送達されることになり、会社に知られます。

任意整理の場合は、弁護士が窓口となって債権者と交渉し、返済可能な計画にスケジュールを立てなおすため、いきなり給与が差し押さえられることは事実上考えにくく、会社に知られる可能性は低いでしょう。

破産した場合は「官報」という機関誌に破産者の氏名や住所等が掲載されますが、「官報」を定期的に読んでいる会社の人事はほとんどいないと思われますので、事実上民間の会社に知られることは、ほぼないといっていいと思います。ただし、公的機関においては「官報」をチェックしている可能性が高く、公務員の場合は上司に知られてしまう危険性が高いといえます。また、建設業など一部の職種は、法律上、破産すると一定期間の間、その職務に就けなくなるとされています。それらの職種の人は破産した事実を会社に申告せざるをえないので、必然的に会社に知られることとなります。

▼自己破産すると一時的に就けなくなる職業例
・弁護士 ・公認会計士 ・税理士 ・社会保険労務士 ・宅地建物取引士 ・旅行業務取扱管理者 ・日本銀行の役員 ・労働者派遣業 ・金融商品取引業 ・信用金庫の役員 ・一般建設業