「寝たら死ぬ!」87歳の元名編集長が語る「人生訓」

刺激的なタイトルだ。著者は1960年代に31歳の若さで「女性自身」の編集長に就任、生まれたての週刊誌というメディアで縦横無尽の活躍を見せた「伝説の編集長」。同誌は櫻井編集長時代に最大147万部を売り上げた。

その櫻井さんが作家デビューしたのは86年、55歳のとき。最初の作品は、ベストセラーになった『女がわからないでメシが食えるか』。女性誌編集長としての長年の経験をもとに、女性マーケットをいかに攻略するかを説いた著作だが、刺激的なタイトルということもあって、「当時は物議をかもしましたね」と櫻井さんは柔和な表情で振り返る。

「女」も「メシが食える」も、建前ではなく本音に寄り添った言葉である。しかし時代は80年代。タイトルを決める際には「女性蔑視といわれかねない」「品がないのでは」と懸念する声もあったという。それらをすべて呑み込んだうえで、「このタイトルでいきましょう」と強く希望したのは櫻井さんだ。実はこのデビュー作をのぞき、櫻井さんは自著のタイトルづけを担当編集者など版元(出版社)に任せてきた。「版元は現在のマーケットを見ているから、売れそうなタイトルをつけてくれるだろう」と考えるからだ。

だが、今回だけは違った。デビュー作に続き、久しぶりに櫻井さんが自らタイトルを決めたのだ。それは「長く温めてきた私の人生論だからです」と言う。伝説の編集長のまなざしが鋭くなる。

別に「寝てはいけない」と主張しているわけではない。櫻井さんは若いころから夜型で、「あまり寝なくてもバリバリ働ける」体質だ。睡眠時間は「6時間ほどで十分」。その生き方を豊富なエピソードで紹介したのが本書である。