ドラッグストアチェーン「マツモトキヨシ」が、新業態の店を増やしている。2015年9月から始めた「マツキヨラボ」の一部では、コスメの“テスター商品”を豊富に取りそろえ、今年6月には横浜市に11店目を開いた。流通アナリストの渡辺広明氏は、「ドラッグストアは売り場が均質化しており、価格や品ぞろえでネット通販に押されている。マツキヨラボはリアル店舗の生き残りの手段だろう」と分析する――。
マツキヨラボ上大岡店(横浜市/著者撮影)

仕事帰りの女性が化粧品を試す売り場

6月1日、ドラッグストアチェーン「マツモトキヨシ」の新業態「マツキヨラボ」上大岡店(神奈川県横浜市)がオープンした。

「マツキヨラボ」とは、薬剤師、管理栄養士に加えて「ビューティースペシャリスト」と呼ばれる専門スタッフらが常駐し、「美と健康をトータルサポートする」とうたったヘルスケアショップだ。2015年9月に1号店を千葉県松戸市にオープンし、上大岡店は11店目になる。

上大岡店を訪れてみると、化粧品(コスメ)のテスター商品を多数取りそろえ、複数ブランドの同種の商品を一カ所で試せるコーナーを設けた、新しい実験販売が行われていた。通常、ドラッグストアでも百貨店でも、化粧品のブランドはそれぞれ独立して置かれており、たとえばKATEとメイベリンのマスカラを並べて比べるような陳列はNGなのだ。上大岡店は、バスターミナルに隣接している。筆者が帰宅ラッシュに訪れたこともあり、買い物に訪れていた会社帰りらしき女性たちがこのテスターを効率的に試していた。

嗜好が細分化し、シェアが分散する主力商品

なぜマツキヨラボ上大岡店では、こうした店作りを行ったのか。ドラッグストアの主力商品のひとつである化粧品やシャンプーなどトイレタリーカテゴリーの消耗品は、買い上げ頻度としては1~2カ月に1回とロングスパンだ。また、消費者の嗜好性やパーソナル性が増しているジャンルでもある。

例えば、シャンプーカテゴリーで上位3ブランドの「ラックス(ユニリーバ)」「パンテーン(P&G)」「メリット(花王)」が占める市場シェアは約15%だ。上位13ブランドに広げてもシェアは約25%とされている。

マツモトキヨシ渋谷Part1店(著者撮影)

顧客の要望に応えるためには、幅広い品ぞろえが欠かせない。ドラッグストアは従来のスーパーと異なり、そうした嗜好の広がりに対応することで繁栄を謳歌してきた。

ドラッグストアは、平成に入ってから最も伸び続けた小売業態だ。日本チェーンドラッグストア協会の調べによると、全店売上高は10年前の約1.38倍に伸長している。30年前、平成のはじめにはまだ「ドラッグストア」という呼び名は浸透しておらず、「薬局」と呼ばれることが大半だった。そんな中でマツモトキヨシが1991年と95年に渋谷に旗艦店をオープンし、そこから当時の“コギャル”を中心に若い女性客を呼び込み、一大ブームを起こす。これをきっかけに、「ドラッグストア」という業態名が一般化していった。