これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、MS&ADホールディングスの鈴木久仁取締役会長のインタビューをお届けしよう――。

少子化、グローバル化、IT化。社会を変える大波は損害保険業界にも押し寄せている。メガ損保の一角であるMS&ADホールディングスは、グループ内に眠る大量の契約データ、事故データなどの活用を急ぐ。そのための人事戦略は。

安全運転の度合いを判定して保険料率を算定する保険

――損害保険業界、そしてMS&ADホールディングスは、これからの社会の変化にどういう影響を受けますか?

少子化が進めば自動車保有台数も当然減ります。これは、最大種目である自動車保険のマーケットが縮小するということですから、従来の事業ポートフォリオは変えざるをえません。その変革に取り組んでいるところです。

MS&ADホールディングス 取締役会長 鈴木久仁氏

グローバル化に関しては、傘下の三井住友海上(МS)がM&Aで海外の有力保険会社との提携を加速する一方、あいおいニッセイ同和損保(AD)のほうは、2000年からまずヨーロッパで始めたトヨタブランドを使った個人向け自動車保険の販売を、アジアやオーストラリアにも広げるなど強化しつつあります。

デジタライゼーションをいかに進めるかも、経営課題のひとつです。保険(Insurance)とテクノロジー(Technology)を組み合わせたインシュアテック(InsurTech)を活用することで、AIやIoTなどを利用して業務の効率化を図るのはもちろんですが、新商品の開発にも応用していきます。たとえば、自動車に設置した端末などから運転速度やアクセル、ブレーキなどの情報を保険会社がリアルタイムで取得し、安全運転の度合いを判定して保険料率を算定する「テレマティクス保険」などの商品です。

――今後は必要とされる人材観も変わりますか?

欲しいのは、変化をいとわず柔軟な考え方ができ、自分で問題意識を持ち、なおかつ想像力を働かせて新しいものを生み出せる人ですね。逆に、上司の指示に右向け右、で従うような人材は、これから徐々に価値がなくなるでしょう。